【ニューヨーク=斉藤雄太】日銀が大規模な金融緩和を維持したことを受け、16日のニューヨーク外国為替市場で主要通貨に対して円安が進んだ。対ユーロでは一時、1ユーロ=155円台前半と2008年9月以来およそ15年ぶりの安値を付けた。金融引き締め継続に前向きな米欧の中央銀行と日銀のスタンスの違いが円売りを誘っている。
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対ドルの円相場は一時、1ドル=141円台後半と22年11月以来7カ月ぶりの円安・ドル高水準になった。16日の東京市場の円の終値は1ドル=141円10銭台、1ユーロ=154円40銭台だった。同日の日銀の緩和維持決定ですでに円安が進行していたが、欧米市場の時間帯に入ってからも円売りが続いた。
今週は日米欧の主要中銀が政策決定会合を開く中銀ウイークで、米連邦準備理事会(FRB)は連続利上げの一時停止を決めたうえで年内に2回の追加利上げを示唆した。欧州中央銀行(ECB)は8会合連続の利上げを決定し、ラガルド総裁は7月の次回会合でも「利上げを続ける可能性が高い」と強調した。緩和を続ける日銀との差が改めて際立ち、金利差拡大を見越した円売りが膨らんだ。
調査会社キャピタル・エコノミクスのヨナス・ゴルターマン氏は、円安加速の一因として「市場のリスク選好度の高まり」を指摘する。米株相場の上昇などでリスク資産の先行きに強気に傾く投資家が増えている。「安全通貨」の円の需要が細ったうえ、低金利の円を売って高金利の通貨を買う「キャリートレード」が活性化しやすくなった面もある。
市場関係者の間では、日本政府による為替介入への警戒感もにわかに高まっている。現在の対ドルの円相場は昨秋に介入を実施した1ドル=145〜151円台という水準からはまだ距離があるが、円安加速で市場と当局の神経戦も熱を帯びそうだ。
出典:日本経済新聞