(ブルームバーグ): ウォール街からスイス東部の保養地ダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)に至るまで、リセッション(景気後退)懸念が先週再び取り沙汰されたが、JPモルガン・チェースによれば、金融市場が織り込む景気下降の確率は、実際には2022年の高水準から急低下している。
JPモルガンのトレーディングモデルによると、高格付け債から欧州株まで9種の資産クラスのうち七つが示すリセッション確率は今や50%を下回る。さまざまな市場で景気縮小が既成事実と事実上見なされていた昨年10月と比べれば状況は大きく変化した。
S&P500種株価指数は73%のリセッション到来の確率を引き続き反映し、グローバルの資金運用主体は景気の軌道に決して強気ではない。だが昨年の98%のピークから確率は低下し、ニューイヤーラリーのきっかけとなったソフトランディング(軟着陸)方向に賭ける投資の拡大と一致する。
JPモルガンのストラテジスト、ニコラオス・パニギリツオグル氏は「中国経済の再開と欧州の天然ガス価格急落、米国での予想を上回るインフレ減速のおかげで、ほとんどの資産クラスがリセッションリスクを着実に織り込まなくなっている。市場は10月時点よりはるかに低いリセッションの可能性を想定している」と指摘した。
パニギリツオグル氏の同僚であるマルコ・コラノビッチ氏は、投資家は今後数カ月の成長鈍化で生じる恐れのある株式への圧力を過小評価しているかもしれないと警戒する。米連邦準備制度の当局者らは、金利が景気抑制的な領域に今後もとどまると警告しており、製造業生産や小売売上高の減少、債券相場の反発に株式弱気派は新たな支援材料を見いだすことが可能だ。
しかし、米国の高利回りクレジットは最近相場がじわり上げた影響で、かなり著しい価格調整を経験し、リセッション確率の織り込みは33%から18%に下がった。欧州市場のユーロストックス指数も一時93%の可能性を反映していたが、今では26%に過ぎない。JPモルガンはさまざまな資産クラスのリセッション前のピークと景気後退下での底を比較し、メトリクスを計算している。
一方、エコノミストらはそれほど楽観的ではなく、コンセンサス予想のリセッション確率は10月時点の50%から65%に上昇した。
債券市場がリセッションシグナルとして選好する米国債のイールドカーブも警告サインの点滅が続いている。3カ月物財務省短期証券(TB)の利回りは10年国債利回りよりも高く、成長鈍化の軌道を投資家が見込んでいる様子がうかがえる。
原題:JPMorgan Model Shows Recession Odds Fall Sharply Across Markets(抜粋)
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