上半期の倒産 2年ぶり増の258件、コロナ関連は103件~ 2022年上半期(1-6月)「食品業」の倒産 ~

2022年上半期(1-6月)の「食品業」の倒産(負債1,000万円以上)は、258件(前年同期比10.2%増)と200件台の低水準だったが、上半期では2年ぶりに前年同期を上回った。また、258件のうち、 『新型コロナ』関連倒産は103件(前年同期71件)で、倒産の約4割(39.9%)を占めた。
資本金別は1千万円未満が136件(構成比52.7%)、負債額別も1億円未満が163件(同63.1%)と、半数以上が小・零細規模だった。形態別は、破産が219件(同84.8%)と9割近くを占めた。
食品の製造から卸売、小売で倒産に追い込まれた企業は、小・零細規模が主体となっている。大型スーパーは、在宅勤務やテレワークの広がりで“巣ごもり需要”が業績を牽引したが、感染拡大による外出自粛や時短営業などを要請された外食産業向け、中止が相次いだイベント向けは需要が落ち込んだ。さらに、資源や原材料が高騰する中での価格競争、品揃えで劣勢に回る小・零細規模の事業者は苦境が続き、コロナ関連支援で凌いでいる。
7月に入り第7波の新規感染者数の急増で、事態は再び厳しさを増している。なかでも原材料やガス、電気、物流費の高騰に加え、人手不足と人件費上昇も負担が大きい。消費者向け商材の価格転嫁は売上高に直結するリスクがあり、小・零細企業ほど価格転嫁が難しい状況に直面している。コロナ関連の支援効果が薄らぐなか、費用負担増から“利益なき成長”をたどる企業の息切れも懸念され、倒産は緩やかに増加をたどる可能性が高まっている。

※本調査は、日本産業分類の「09食料品製造業」「10飲料・たばこ・飼料製造業」「52飲食料品卸売業」「58飲食料品小売業」の2022年上半期(1-6月)の倒産を集計、分析した。

上半期では2年ぶり増加、『新型コロナ』関連倒産は103件

 2022年上半期(1-6月)の「食品業」倒産は、258件(前年同期比10.2%増)で上半期では2年ぶりに前年同期を上回った。ただ、件数は200件台にとどまり、低水準に変わりはない。
2022年上半期の「食品業」倒産258件のうち、『新型コロナ』関連倒産は103件(同45.0%増)で、構成比は39.9%(前年同期30.3%)だった。食品業界は“巣ごもり需要”などもあったが、新型コロナ感染拡大に伴う外出自粛やイベント中止・延期などの影響が大きかった。
主な倒産は、イセ食品(株)(東京都、負債278億4,700万円、3月会社更生法)は、新型コロナ感染拡大による外食産業の不振などで業績が悪化。私的整理による再建を模索したが難航し、債権者から会社更生法を申し立てられた。、MQ整理(株)(大阪府、同30億円、2月特別清算)は、事業所向け昼食弁当の製造販売を中心に手掛けていたが、新型コロナ感染拡大で事業所向け昼食弁当の需要が減少。2021年6月に給食事業を譲渡し、同年11月に解散していた。

食品業

【業種別】最多が農畜産物・水産物卸売業の57件

 業種別(小分類)は、最多が「農畜産物・水産物卸売業」の57件(前年同期比18.7%増、構成比22.0%)だった。このほか、「各種食料品小売業」が16件(前年同期比6.6%増)、「パン・菓子製造業」が12件(同71.4%増)、「野菜・果実小売業」が8件(同33.3%増)、「鮮魚小売業」が7件(同40.0%増)などで、前年同期を上回った。
一方、「食料・飲料卸売業」が41件(同29.3%減)、「菓子・パン小売業」が16件(同20.0%減)、「水産食料品製造業」が15件(同25.0%減)などで、前年同期を下回った。

業種別の『新型コロナ』関連倒産は、最多が農畜産物・水産物卸売業の20件(構成比35.0%、前年同期13件)。次いで、食料・飲料卸売業(同46.3%、同20件)、その他の食料品製造業(同57.5%、同10件)が各19件、水産食料品製造業が10件(同66.6%、同4件)の順。
コロナ禍で外出自粛やイベント中止が相次いだことで、外食やホテルなどへの業務用卸が低迷したことが主な要因となっている。

食品業

【原因別】販売不振の構成比が7割

 原因別は、最多が「販売不振」の182件(前年同期比5.2%増)で、倒産に占める構成比は70.5%(前年同期73.9%)だった。また、「既往のシワ寄せ」は37件(前年同期比12.1%増)。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は219件(前年同期比5.7%増)で、構成比は84.8%(前年同期88.4%)だった。
コロナ禍で販売不振から抜け出せない企業も多い。

【形態別】法的倒産が9割超、11年ぶりに会社更生法が発生

 形態別は、法的倒産が251件(前年同期比11.0%増)で、2年ぶりに前年同期を上回った。倒産全体の97.2%と大半を占めた。5年連続で90.0%台に乗せ、上半期では1993年同期以降の30年間で最高となった。
法的倒産は、破産が219件(前年同期比15.8%増、構成比84.8%)で、2年ぶりに前年同期を上回った。一方、特別清算は26件(同7.1%減、同10.0%)で6年ぶり、民事再生法は5件(前年同期比44.4%減、前年同期9件)で、2年連続で前年同期を下回った。会社更生法は1件(前年同期ゼロ)で、上半期では2011年同期(2件)以来、11年ぶりに発生。取引停止処分は、前年同期と同件数の7件だった。

【資本金別】1千万円未満が5割超

 資本金別は、1千万円未満が136件(前年同期比1.4%増、前年同期134件)で、全体の半数以上(52.7%、前年同期57.2%)を占めた。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が64件(前年同期比16.8%減)、「個人企業他」が37件(同60.8%増)、「5百万円以上1千万円未満」が26件(同4.0%増)、「1百万円未満」が前年同期と同件数の9件だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が108件(同18.6%増)、「5千万円以上1億円未満」が11件(同120.0%増)で、それぞれ2年ぶりに前年同期を上回った。
一方、1億円以上は3件(同25.0%減)で、2年ぶりに前年同期を下回った。

【負債額別】6年ぶりに100億円超の大型倒産が発生

 負債額別は、1億円未満が163件(前年同期比5.8%増)で、全体の63.1%(前年同期65.8%)だった。内訳は、「1千万円以上5千万円未満」が114件(前年同期比16.3%増)、「5千万円以上1億円未満」が49件(同12.5%減)。
このほか、「1億円以上5億円未満」が66件(同6.4%増)で2年ぶり、「5億円以上10億円未満」が18件(同50.0%増)、「10億円以上」が11件(同83.3%増)で4年ぶりに、前年同期を上回った。100億円以上は1件で、上半期では2016年同期以来、6年ぶりに発生。

【地区別】9地区のうち6地区で増加

 地区別は、9地区のうち6地区で増加した。北海道25件(前年同期比177.7%増)、東北19件(同5.5%増)は、4年ぶりに前年同期を上回った。また、中部37件(同23.3%増)、北陸5件(同150.0%増)、近畿51件(同24.3%増)、中国16件(同14.2%増)は、それぞれ2年ぶりに増加した。
一方、関東76件(同7.3%減)は3年連続、四国3件(同62.5%減)、九州26件(同13.3%減)は2年連続で、それぞれ前年同期を下回った。

食品業

出典:東京商工リサーチ

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