英中銀、利上げ幅0.5%に再拡大 政策金利5%に

【ロンドン=大西康平】英イングランド銀行(中央銀行)は22日、利上げ幅を3会合ぶりに0.5%に拡大し、政策金利を4.5%から5%に引き上げると発表した。欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)後の人手不足が深刻で、インフレ圧力がいっこうに弱まらないためだ。カナダやオーストラリアがいったん停止した利上げを再開するなど、各国が粘着インフレへの対応に苦慮している。

21日まで開いた金融政策委員会で13会合連続の利上げを決定した。2月までの2会合で利上げ幅を0.5%としていたが、3月に通常の0.25%に戻していた。政策金利が5%以上となるのは、2008年以来15年ぶりだ。

大幅利上げに再び踏み切ったのは、物価高の主役が石油やガスといったモノの価格から、賃金上昇の影響を受けやすいサービス価格に移り、インフレが想定以上に長引きかねないことへの危機感があるためだ。

声明文では「直近の指標は大きく上振れして、よりしつこいインフレのプロセスを示している」と懸念。賃上げが幅広い物価上昇を引き起こす「二次的効果」についても「解消に時間がかかりそうだ」として警戒感をあらわにした。

5月の英消費者物価指数は前年同月比8.7%上昇と、市場予想に反して伸び率が鈍化しなかった。エネルギーや食品などを除くコア指数の上昇率は7.1%上昇と1992年3月以来の高水準だった。賃上げを求めてストライキが頻発し、4月の平均賃金の伸び率は6.5%と2カ月連続で上昇した。

ブレグジットによる人手不足が労働需給の逼迫をもたらす一因だ。英国の失業率は3%台後半と1974年以来の低水準が続く。22年にEU域内から英国に入った移民の数から同国を離れた人数を引いた純移民数は前年比マイナス5万1000人とブレグジット後の20年から3年連続の純減だ。18年には18万人だった。

イングランド銀行が利上げを継続するとの見方は強い。リフィニティブの市場予想では、12月までの残り4会合すべてで利上げするとの見通しが出ていた。

いったん停止した利上げ再開の動きも広がっている。カナダ銀行(中央銀行)は7日、3会合ぶりに利上げして政策金利を4.5%から4.75%に引き上げた。コア指数の上昇率が4%台にとどまっていることから「超過需要が続き、消費者物価指数の伸び率が2%を大きく上回って推移する懸念が強まっている」とした。オーストラリア準備銀行(豪中央銀行)も4月に一旦利上げを停止してから、5月に利上げを再開した。

各国中銀は景気の失速を避けながらインフレを抑える軟着陸を狙ってきたが、想定外のインフレの根強さがそのシナリオを揺るがしつつある。

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