【ワシントン時事】米中堅銀行シリコンバレー銀行の経営破綻を端緒とした米欧の金融不安が、世界の経済成長を圧迫するとの懸念が強まっている。
銀行部門の動揺をきっかけに、融資縮小の恐れが浮上。開催中の国際通貨基金(IMF)と世界銀行の春季会合では「警戒が最大限必要だ」(ゲオルギエワIMF専務理事)との声が上がった。
「金融の安定に関連して深刻な景気下振れリスクが生じた」。IMFチーフエコノミストのグランシャ氏は11日の記者会見で、懸念をあらわにした。
IMFは2023年の世界の成長率見通しを2.8%と、従来予想から0.1ポイント引き下げた。世界的に融資条件が急激に厳格化した場合には、成長率が1.0%程度に落ち込むシナリオも想定している。
ただ、今回の信用不安の広がりは「新たな金融危機ではなく、(リーマン・ショックの)08年とは違う」(ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁)との見方が大勢。米当局が破綻2行の預金全額保護を打ち出し、経営危機に陥ったスイス金融大手クレディ・スイスがライバルのUBSに救済買収されたことで、動揺はひとまず収まった。
イエレン米財務長官は11日の記者会見で「世界経済について過度に悲観していない。もっと前向きになるべきだ」と強調。米欧や途上国経済の底堅さに自信を示した。
もっとも、金融不安の深刻化による景気の大幅な落ち込みを回避できたとしても、IMFは世界成長率が当面、3%前後の低水準で推移すると懸念する。ゲオルギエワ氏は13日の会見で「2.8%成長では、世界の人々や企業にチャンスをもたらすのに十分でない」と訴え、各国に成長押し上げのための構造改革などを求めた。