新興国の外貨準備高が減少 ドル高で目減り、適正下回る

新興国の外貨準備が減少している。韓国は2021年末から22年10月末までに14%減、中国は同6%減となった。米国の利上げに伴うドル高でドル換算の金額が目減りした。通貨防衛のための為替介入でドル資金が減った国もある。外貨準備が不足すると資金流出など危機への対応が難しくなり、国際金融市場を揺さぶる事態に発展しかねない。

外貨準備高は通貨の防衛力を測る物差しだ。新興国は危機対応のため積み上げてきたが、足元でその水準に懸念が生じつつある。

外貨準備高が十分かを測る外貨準備適正評価(ARA)という指標がある。外貨獲得や対外債務の返済、資本流出といったリスクを金額で換算し、外貨準備でどれだけ補えるかを示す。数値化したリスクと外貨準備高が同じなら100%となる。

第一生命経済研究所によると、9月末時点のARAは韓国が98%、中国が58%だった。いずれも国際通貨基金(IMF)が適正水準とみなす100~150%を下回る。中国の外貨準備高は世界最大だが「管理変動相場制の維持に十分とは言えない」(同研究所の西浜徹氏)という。

中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した10月末時点の外貨準備高は3兆524億ドル(約448兆円)だった。昨年末と比べて2000億ドル近く少なく、17年1月以来の3兆ドル割れが目前に迫る。10月に限るとドルの主要通貨に対する上昇が一服し、9月末比でわずかに増えた。

韓国の外貨準備高は10月末時点で4140億ドルと、昨年末から約500億ドル減った。ウォン買い・ドル売りの為替介入を繰り返してきたが、外国人投資家の「韓国売り」は収まらない。ウォンは対ドルで年初比2割安の水準で推移する。

「1997年の通貨危機や2008年の金融危機と比べても今は管理可能だ」。韓国金融監督院の李卜鉉(イ・ボクヒョン)院長は7日の記者会見で金融不安説の火消しに追われた。

中韓だけではない。通貨リンギが1971年以降の最安値圏で推移するマレーシアのARAは84%にとどまる。アジア以外でもチリ(61%)や南アフリカ(67%)も適正とは言えない水準だ。

(北京=川手伊織、犬嶋瑛)

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