「食品業」倒産 3年ぶり増の535件 コロナ関連倒産は1.4倍増に広がる ~ 2022年「食品業」の倒産 ~

新型コロナ感染拡大が3年目を迎えた2022年の「食品業」の倒産(負債1,000万円以上)は、535件(前年比21.3%増)と600件を下回ったが、3年ぶりに前年を上回った。535件のうち、新型コロナ関連倒産は232件(前年158件)で、食品業倒産の4割超(43.3%)を占めた。

倒産した「食品業」では、製造業が147件(前年比38.6%増、構成比27.4%)、卸売業が204件(同7.3%増、同38.1%)、小売業が184件(同26.8%増、同34.3%)だった。
資本金別では、1千万円未満が310件(構成比57.9%)、負債額別も1億円未満が337件(同62.9%)とそれぞれ約6割を占めた。形態別は、破産が469件(同87.6%)と8割以上を占めた。
食品業は、コロナ禍で時短営業が広がった外食産業向け、中止が相次いだイベント向け需要が落ち込み、小・零細規模の事業者はコロナ関連支援策に支えられた。しかし、コロナ禍の長期化で支援効果が薄れる一方、巣ごもり需要も一巡し、また物価高が影響し2022年は1月・6-8月を除く8カ月で前年同月を上回った。
経済活動は動き出したが、新しい生活様式の浸透などでコロナ前の状況には戻っていない。さらに、資源や原材料の価格上昇、人件費上昇も重くのしかかっている。このため、当面は価格転嫁やコストアップ分の吸収が難しい小・零細企業を中心に、倒産は緩やかな増勢をたどるだろう。

※ 本調査は、日本産業分類の「09食料品製造業」「10飲料・たばこ・飼料製造業」「52飲食料品卸売業」「58飲食料品小売業」の2022年(1-12月)の倒産を集計、分析した。

倒産は535件で3年ぶりに増加、新型コロナ関連倒産は232件

 2022年の「食品業」倒産は535件(前年比21.3%増)で、3年ぶりに前年を上回った。ただ、件数は1990年以降の30年間で、2021年(441件)に次ぐ、2番目の低水準だった。
業種別では、製造業147件(前年比38.6%増)、卸売業204件(同7.3%増)、小売業184件(同26.8%増)と増加したが、コストアップと需要の変化に対応しにくい業種ほど増加率が大きい。
食品業は、コロナ禍での外出自粛やイベント中止・延期の一方で、巣ごもり需要、中食の広がりで明暗を分けた。こうした動きが一巡する頃に、物流費や原材料価格の上昇も重なり、厳しい業況から抜け出すのが遅れている。
主な倒産は、イセ食品(株)(東京、負債278億4,700万円、3月)は、新型コロナ感染拡大による外食産業の不振などで業績が悪化。私的整理による再建を模索したが難航し、債権者から会社更生法を申し立てられた。(株)肉の神明(東京、同208億400万円、9月)は、コロナ禍による外食産業の不振の影響などで事業環境が悪化。さらに、飼料の高騰で採算が低下するなか、養豚場での疫病の発生もあって資金繰りは厳しさを増し、民事再生法を申請した。

食品業

【業種別】最多が農畜産物・水産物卸売業の117件

 業種別(小分類)では、最多が「農畜産物・水産物卸売業」の117件(前年比21.8%増、構成比21.8%)で、3年ぶりに前年を上回った。このほか、「畜産食料品製造業」11件(前年比266.6%増)と「食肉小売業」9件(同350.0%増)が2年ぶり、「各種食料品小売業」37件(同48.0%増)、「鮮魚小売業」15件(同87.5%増)、「菓子・パン小売業」44件(同2.3%増)が3年ぶり、「パン・菓子製造業」21件(同31.2%増)と「野菜・果実小売業」15件(同50.0%増)が4年ぶり、「野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業」11件(同120.0%増)と「酒小売業」13件(同30.0%増)が5年ぶりに、それぞれ前年を上回った。

新型コロナ関連倒産は、最多が「農畜産物・水産物卸売業」の48件(構成比41.0%、前年40件)で、以下、「食料・飲料卸売業」42件(同48.2%、同34件)、「菓子・パン小売業」26件(同59.0%、同17件)の順。コロナ禍で外食産業やホテルなどの業況回復の遅れに加え、原材料価格が上昇する一方で価格転嫁が難しく、事業運営に影響を及ぼした。

食品業

【原因別】販売不振の構成比が7割

 原因別は、最多が「販売不振」の389件(前年比19.3%増、構成比72.7%)で、3年ぶりに前年を上回った。また、「既往のシワ寄せ」が66件(同10.0%増、同12.3%)で、4年ぶりに前年を上回った。『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は455件(前年比17.5%増)で3年ぶりに前年を上回り、構成比は85.0%(前年87.7%)だった。
コロナ禍の長期化で販売不振が続き、業績回復が遅れた中小企業が多いことを示した。

【形態別】法的倒産の構成比が30年間で最高の97.1%

 形態別では、法的倒産が520件(前年比22.0%増)で、3年ぶりに前年を上回った。構成比は97.1%で、前年の96.5%を上回り、1993年以降の30年間で最高になった。
消滅型倒産のうち、破産が469件(前年比27.7%増、構成比87.6%)で、3年ぶりに前年を上回った。特別清算が40件(同11.1%減、同7.4%)で、2年連続で前年を下回った。消滅型は509件(同23.5%増、同95.1%)で、構成比が30年間で最も高かった。
一方、民事再生法は10件(前年比28.5%減、前年14件)、会社更生法は1件(前年ゼロ)にとどまった。
このほか、取引停止処分は14件(前年比27.2%増)で、3年ぶりに前年を上回った。

【資本金別】1千万円未満が約6割

 資本金別件数は、「1千万円未満」が310件(前年比17.4%増、前年264件)で、構成比は57.9%(前年59.8%)と、約6割を占めた。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が165件(前年比18.7%増)、「個人企業他」が63件(同12.5%増)、「5百万円以上1千万円未満」が62件(同24.0%増)、「1百万円未満」が20件(同5.2%増)だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が201件(同26.4%増)で5年ぶり、「5千万円以上1億円未満」が20件(同42.8%増)で2年ぶりに、それぞれ前年を上回った。
「1億円以上」は、前年と同件数の4件だった。

【負債額別】1億円未満が6割超、100億円以上は6年ぶりに発生

 負債額別件数は、「1億円未満」が337件(前年比19.9%増、前年281件)で、構成比は62.9%(前年63.7%)だった。このほか、「1億円以上5億円未満」が143件(前年比19.1%増)で3年ぶり、「5億円以上10億円未満」33件(同37.5%増)と「10億円以上」22件(同37.5%増)が4年ぶりに、それぞれ前年を上回った。また、100億円以上は2件で、2016年以来、6年ぶりに発生。

【地区別】9地区のうち、中国、四国を除く7地区で増加

 地区別は、9地区のうち、中国、四国を除く7地区で増加した。北海道38件(前年比90.0%増)が6年ぶり、関東176件(同24.8%増)と中部68件(同23.6%増)が5年ぶり、東北38件(同8.5%増)と近畿102件(同29.1%増)が3年ぶり、北陸16件(同128.5%増)と九州61件(同8.9%増)が2年ぶりに、それぞれ前年を上回った。
一方、四国7件(同63.1%減)が、2年連続で前年を下回った。
中国は、前年と同件数の29件だった。
都道府県別件数の増減率(件数10件以上)では、増加が富山233.3%増(3→10件)、岐阜133.3%増(6→14件)、北海道90.0%増(20→38件)、神奈川80.9%増(21→38件)、大阪73.5%増(34→59件)、長崎71.4%増(7→12件)、埼玉61.5%増(13→21件)、福岡47.0%増(17→25件)、広島37.5%増(8→11件)、東京17.5%増(57→67件)、静岡13.6%増(22→25件)、愛知11.7%増(17→19件)、京都10.0%増(10→11件)。
一方、減少は宮城29.4%減(17→12件)、兵庫16.6%減(24→20件)、茨城9.0%減(11→10件)。千葉は前年と同件数の20件だった。

食品業

出典:東京商工リサーチ

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