はじめに
東京商工リサーチは官公庁の担当者向けに倒産状況の説明会を開催。友田常務取締役情報本部長が2020年の倒産概況の見通しと21年の見通しを概説。今回は新型コロナウイルスの影響を考慮してWEB形式で開催しました。
説明の概要
2020年1月から12月までの倒産件数は7773件と2年ぶりに前年を下回って過去50年間で4番目に少ない件数でした。新型コロナウイルスの影響もあって20年春先の時点では倒産件数は増えるだろうと予測。ただ手厚い資金繰りの支援策で倒産は抑制されました。それでも宿泊業と飲食店に関してはコロナの影響で人の移動が制限されたところから増加しています。また老人福祉や介護事業でも高齢者の利用が減ったところから倒産が増加。一方巣ごもり・ステイホームに乗っかった小規模スーパーなどは倒産件数が減少しています。
倒産の原因は販売の不振が全体の74%近くを占めています。また偶発的原因の大部分は代表者の死亡などからくる後継者難で事業承継がうまくいかずに倒産する会社も増えています。
倒産した企業の多くは従業員10名未満、負債総額1億円未満の小規模零細企業が大半を占めています。新型コロナウイルスの影響で小規模零細企業は立て直しを図ることができずに倒産する企業が増えています。倒産した企業にいた従業員の総数は4名700名超にのぼりました。
また上場企業の倒産はレナウンとNutsの2社。リーマンショック時の08・09年で53件の上場企業が倒産をしたことから比較すると格段に少なくなっています。コロナの影響を予測した資金調達がひとmずうまくいっているのではないかと思われます。
東京商工リサーチが毎月実施しているアンケートでは前年同月との比較で減収の中小企業は4月期から9月期までの6か月連続で80%を超えています。10月は60%台まで下がるもまた11月に70%台に戻ってしまいました。業種にもよりますが中小企業は売上が前年比2割減で多くの企業が赤字になりました。資金調達が続くことで倒産は回避できるも今後に厳しい課題が残ります。
コロナ渦で業績が悪化した企業に銀行が短期の借り入れに応じないケースも増えてきています。資金繰り支援がかえって企業の債務を増加させてしまう原因にもなってしまいました。このような企業が今後倒産の方向に向かってしまう可能性は小さくありません。
コロナで中小企業の事業再生の動きが鈍く廃業を選択してしまう企業も多くなるものと予想されます。倒産と廃業は意味合いが多少異なるも市場から企業がなくなることそして雇用や取引が減るということで経済全体に大きなマイナスを及ぼします。
緊急事態宣言が発されているところはもちろんのこと、発令されていないところでも地域に影響を与えています。人の動きが減っていくことで交通機関・大消費地の東京で飲食の時短が起こると、地方から東京などの首都圏と取引している卸売・運送・食品などの地方企業も影響を受けます。三密回避ができる焼肉店などは倒産を減少させられる可能性はあるも、トータルでみていくと緊急事態宣言を受けたところを中心にして企業倒産が増えて経済が縮小しかねない状況と言えます。
倒産・休業・廃業を合わせると全国で5万件あります。倒産と合わせると全国で5万7000近い企業が市場から消えました。コロナの影響で予測は難しいも21年の企業倒産は1万件、休廃業や解散が5万300件から5万5000件を予測しています。
参考資料・出典
東京商工リサーチ:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210118_02.html