「後継者難倒産」が急増、上半期(1-6月)で初の200件超え 2022年上半期『後継者難』倒産の状況調査

2022年上半期(1-6月)の後継者不在による『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)は、224件(前年同期比17.8%増)と急増した。調査を開始した2013年以降の上半期では、2020年同期の195件が最多だったが、これを抜き最多記録を更新した。倒産全体(3,060件)の7.3%を占め、上半期では初めて7%台に乗せ、後継者問題が経営の重要な位置付けとなっていることを示している。
要因別では、代表者の「死亡」が122件(構成比54.4%)と半数以上を占めた。次いで、「体調不良」が71件(同31.6%)で、この2要因で『後継者難』倒産の9割近く(同86.1%)を占めた。
産業別では、最多がサービス業他の54件(前年同期比35.0%増、構成比24.1%)。以下、建設業51件(同30.7%増、同22.7%)、卸売業37件(前年同期比19.3%増)の順。
資本金別では、1千万円未満が128件(前年同期比28.0%増、構成比57.1%)と約6割を占めた。1億円以上は2件と4年ぶりに発生した。中小・零細企業だけでなく、中堅企業にも後継者問題が広がりつつある。
2021年の経営者の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)で、経営者の高齢化が進む一方、多くの中小企業では後継者の育成や事業承継の準備が先送りされている。長引くコロナ禍で業績回復が遅れ、円安や資源高、人手不足などが重しになるなか、経営体力がぜい弱な中小企業に後継者不在の問題が事業継続への高いハードルになってきている。

  • ※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年上半期(1-6月)の『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。

『後継者難』倒産が初の200件超え、全倒産に占める構成比は7.3%

 2022年上半期(1-6月)の『後継者難』倒産は224件(前年同期比17.8%増)で、上半期では調査を開始した2013年同期以降、初めて200件台に乗せた。
2022年上半期の企業倒産は3,060件(同0.5%増)と、低水準ながら2年ぶりに増加した。そうしたなか、代表者の高齢化や後継者がいないことに起因した『後継者難』倒産の構成比は7.3%(前年同期6.2%)で、前年同期を1.1ポイント上回った。
代表者の病気や死亡が事業継続を断念する大きな要因になり、後継者不在は事業規模を問わず経営上の大きなリスクになっている。特に、金融機関は企業の事業性評価の際、代表者の年齢や後継者(候補)の有無も判断材料にしており、後継者問題は企業にとって将来を見据えた設備投資などの長期資金の借入や生産性向上など、経営に直結する施策にも影響を及ぼしかねない。
中小・零細企業の後継者不在や事業承継は、企業単独での解決は難しくなっている。政府や自治体、金融機関だけでなく、外部の支援機関との協力も今まで以上に重要になっている。

上半期後継者1

【要因別】「死亡」と「体調不良」で8割超

 要因別では、最多が代表者などの「死亡」の122件(前年同期比25.7%増)で、調査を開始した2013年以降では初めて100件台に乗せた。『後継者難』倒産に占める構成比は54.4%で、前年同期の51.0%より3.4ポイント上昇した。
また、「体調不良」は71件(前年同期比24.5%増、構成比31.6%)だった。
代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計193件(前年同期比25.3%増)で、前年同期の154件を超え、最多を更新した。『後継者難』倒産に占める構成比は86.1%で、前年同期の81.0%より5.1ポイント上昇した。
このほか、「高齢」が22件(前年同期比22.2%増)だった。
代表者の高齢化が年々進むなかで、代表者などの「死亡」や「体調不良」が事業運営において大きなリスクとなっている。

上半期後継者2

【産業別】10産業のうち、7産業が増加

 産業別は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業、金融・保険業、不動産業を除く、7産業が前年同期を上回った。
最多は、サービス業他の54件(前年同期比35.0%増)で、上半期では4年連続で前年同期を上回り、調査を開始した2013年以降で初めて50件台に乗せた。
次いで、建設業が51件(同30.7%増)で、2年ぶりに前年同期を上回り、最多を記録した。
このほか、製造業34件(同3.0%増)、卸売業37件(同19.3%増)、小売業24件(同14.2%増)、運輸業10件(同42.8%増)、情報通信業5件(同150.0%増)は、それぞれ2年ぶりに前年同期を上回った。
一方、不動産業は7件(同50.0%減)で、4年ぶりに前年同期を下回った。また、金融・保険業は、2年ぶりにゼロ(前年同期1件)。
農・林・漁・鉱業は、前年同期と同件数の2件だった。
業種別では、土木工事業7件(前年同期1件)、建築工事業9件(同8件)、内装工事業7件(同5件)、一般管工事業6件(同3件)、一般貨物自動車運送業9件(同5件)、建築設計業5件(同4件)、歯科診療所3件(同1件)などで、前年同期を上回った。

後継者難

【形態別】破産が9割

 形態別は、最多が「破産」の206件(前年同期比19.7%増、構成比91.9%)だった。また、特別清算が6件(前年同期12件)で、消滅型の倒産が212件(同184件)と、ほとんどを占めた。
再建型の「会社更生法」はゼロ、「民事再生法」は1件と、それぞれ前年同期と同件数だった。
業績が厳しさを増すなかで、後継者の育成や事業承継の準備まで手が回っていない。代表者に不測の事態が生じた場合、事業継続が難しく、「破産」を選択するケースが大半となっている。

【資本金別】1千万円未満が5割超

 資本金別は、「1千万円未満」が128件(前年同期比28.0%増、構成比57.1%)だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が86件(前年同期比3.6%増)、「5千万円以上1億円未満」が8件(同14.2%増)と、それぞれ3年連続で前年同期を上回った。「1億円以上」は2件(前年同期ゼロ)で、4年ぶりに発生。後継者問題は、事業規模に問わず発生している。

【負債額別】1億円未満が約7割

 負債額別は、「1億円未満」が152件(前年同期比18.7%増)。『後継者難』倒産に占める構成比は67.8%(前年同期67.3%)だった。内訳は、「1千万円以上5千万円未満」が105件(前年同期比22.0%増)、「5千万円以上1億円未満」が47件(同11.9%増)で、それぞれ2年ぶりに前年同期を上回った。
このほか、「1億円以上5億円未満」が64件(同20.7%増)で、3年連続で前年同期を上回った。一方、「5億円以上10億円未満」は6件(同14.2%減)で、4年ぶりに前年同期を下回った。「10億円以上」は前年同期と同件数の2件だった。

出典:東京商工リサーチ

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