ブルームバーグ): 米銀バンク・オブ・アメリカ(BofA)の決算内容からは、リセッション(景気後退)が潜んでいる兆しを見つけるのは難しい。
ウォール街の他の銀行に続き、BofAは米消費者の行動についておおむね明るい評価を下した。消費者が旅行や娯楽への支出を増やす中、同行クレジットカード利用額は7-9月(第3四半期)に前年同期比13%増加した。さほど裕福ではない消費者の貯蓄も新型コロナウイルス禍前の5倍だ。 担保差し押さえで同行が回収した乗用車台数はどの月でも半分に減っている。
投資家は、物価上昇に加えインフレ抑制に向けた米金融当局の積極的利上げに米消費者がどう耐えていくかを見極めようとする間、神経をとがらせてきた。米大手銀行は会計基準に沿って貸倒引当金の積み増しを迫られ、利益が圧迫されたが、幹部らは消費者にストレスの兆しは見られないと一貫して主張している。
BofAのアラステア・ボースウィック最高財務責任者(CFO)は17日のアナリストとの電話会見で、延滞率は同行で過去2番目に低い数字だと指摘した上で、「これら数字は非常に低く、われわれは変化に目を凝らしている」と語った。
BofA決算はJPモルガン・チェースとウェルズ・ファーゴの先週の発表内容と類似している。3行はいずれも、自行クレジットカード利用額が急増したにもかかわらずカードの純貸倒償却率が前期比で低下した。
BofA、7-9月純金利収入が予想上回る-金利上昇が寄与
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は14日、アナリストとの電話会見で「われわれはある種の奇妙な環境にある」とした上で、「消費者は極めて良好な状態にあり、企業も極めて良好な状態だ」と語った。
シティグループのジェーン・フレーザーCEOも14日、米金融当局の物価抑制策が経済成長を抑制し、来年末までにマイルドなリセッションに入ると同行では見込んでいるとする一方、消費者はそれに耐えることができるだろうと話した。
確かに、持ちこたえているのは消費者だけではないと見受けられる。BofAの融資先企業では格上げが格下げを上回っているとブライアン・モイニハンCEOは語った。
幾分意外な展開だが、インフレは今年、銀行の業績に寄与している。物価上昇は買い物客が支出を増やすのに十分なペースで推移し、クレジットカード利用で銀行が商店から回収する手数料収入を押し上げている。物価高は旅行や裁量支出が抑えられるほど急激でもない。そうした支出は金利上昇とともに、銀行のクレジットカード事業への追い風となっている。
一方で、これは危うい状況でもある。エコノミストらは米金融当局の行動がリセッションを招き、人員削減につながると引き続き警告している。経験則で言うと、銀行で消費者の貸し倒れは失業率とともに上昇する。
ボースウィックCFOは17日、新たな注意点にも言及した。BofAのカード利用額の伸びが鈍化し始めたことだ。利用額は今年に入って12%のペースで伸びてきたが、9月は10%増にとどまった。
同CFOは「何らかの形のリセッションがあるなら、明確に予想されるのは何らかの需要緩和だ。ただまだそれは確認されていない」とした上で、「当行の消費者支出を見ると、なお伸びているが、これまでより若干減速している可能性が高い」との見方を示した。
原題:Recession Warnings Are Hard to Find in Wall Street’s Results(抜粋)
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Jennifer Surane, Katherine Doherty
出典:Yahoo!ニュース