タイ、入国規制強化を撤回 接種証明の提示求めず

【バンコク=村松洋兵】タイのアヌティン副首相兼保健相は9日、同日から実施した外国人旅行者に新型コロナウイルスのワクチン接種証明書の提示を求める入国規制を撤回すると明らかにした。未接種でも入国を認める。中国による海外渡航規制の緩和に合わせて入国規制の再強化を急きょ決めたが、拙速な対応に批判が上がっていた。

アヌティン氏は同日、中国人旅行客を出迎えるために訪れたバンコク近郊のスワンナプーム空港で記者団に対して「接種証明書の提示を求めるのは面倒であり不便である」と述べ、措置を撤回する理由を説明した。

タイ政府は5日に開いた関係閣僚会議で、全ての外国人旅行者に対して接種証明書の提示を求める措置の導入を合意した。実施日の9日から未接種者は入国できない可能性があり、混乱が広がっていた。接種証明書の提示は不要になるが、一部の国からの渡航者を対象にした、感染時の治療費を賄う保険への加入を求める措置は継続する。

タイ政府が中国からの渡航に限らず全ての外国人を入国規制の対象にしたのは、中国人への差別的な対応をしないように求める中国政府に配慮したためとみられていた。規制強化は外国人旅行者数の回復に悪影響を及ぼすとして、観光業界などから政府に見直しを求める声が上がっていた。

タイの民間航空局は7日までに航空各社に対して、乗客が接種証明書を保持しているか確認するように通達していた。SNS(交流サイト)には航空会社からタイ行きの便への搭乗を拒否されたという報告が上がっている。タイへの渡航を延期・中止する人も多かったようだ。

出典:日本経済新聞

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