ユニゾ倒産劇で地銀が背負った深入りの「代償」、借入金は地銀やJAバンクなど約50行に分散

「いくらお詫び申し上げても、し尽くせない思い」。5月9日、東京都内の貸会議室。居並ぶ債権者を前に、ユニゾホールディングス(HD)の山口雄平社長は謝罪の弁を述べた。 【図表】ユニゾの借入先金融機関49社、地銀やJAバンクがずらりと並ぶ  債権者集会に先立つ4月26日、同社は1200億円超もの負債を抱えて民事再生法の適用を申請。現時点では、2023年最大の倒産となった。  ユニゾはもともと、日本興業銀行(現・みずほ銀行)系の不動産会社で、最盛期には国内外で102棟のオフィスビルと20店舗のホテルを所有する大地主だった。だが、潤沢な資産に目を付けた旅行代理店大手のHISが2019年にTOB(株式公開買い付け)を発表したことを契機に、ユニゾの運命は流転する。

 TOBに反発したユニゾはHISに代わるスポンサーを模索した。複数の外資系ファンドが名乗りを上げたが、協議は難航。結局、ユニゾの従業員たちが設立した持株会社が、2020年6月にEBO(従業員による買収)を実施した。 

■コロナ禍が追い討ちに  

その後、コロナ禍によってホテル稼働が悪化。ビルやホテルの売却を進めるも、2023年3月期決算は約5000万円の最終赤字に転落した。この結果、5月末に控える社債100億円の償還原資が確保できず、このほど民事再生法の適用を申請した。

 この倒産劇でババを引かされたのは地方銀行たちだ。各行はすでに債権の大半を引き当て処理しているが、かねて経営不安がささやかれていたユニゾに対するリスク管理は適切だったかという、重い課題が突きつけられている。  東洋経済が入手した債権者集会での配布資料によれば、2023年3月末時点でユニゾHD及び不動産やホテル子会社が抱える借入金は計713億円。その大半を地銀やJAバンクといった中小金融機関が占める異様な債権者構成だ。

 なぜ、このような構成になったのか。背景にはユニゾの「みずほ離れ」戦略がある。  ユニゾの地銀開拓はトップダウンで進められた。EBOが実施される2020年6月まで社長を務めていた小崎哲資氏は、ユニゾの源流である興銀出身だ。2009年にはみずほフィナンシャルグループの副社長にまで上り詰めたが、社長レースに敗北し2010年にユニゾへと転籍した過去を持つ。  ユニゾのメインバンクは長らくみずほ銀行だったが、小崎氏時代に「喧嘩別れ」(みずほ幹部)した。資金面での縁を切り、地銀などへの借り換えを進めた。ユニゾの元社員は「財務部に対して地銀との取引数増加がノルマとして与えられた」と打ち明ける。

当の地銀は「ユニゾはみずほ系の企業で、メインバンクをみずほが務めているから大丈夫だろうと思い、融資を増やしてしまった」(ある地銀幹部)と悔やむ。実質的なメインバンクが存在しない、いびつな債権者構成はこうして出来上がった。

 ■1年前からスポンサー探しに奔走  

ユニゾ向け債権を有するある地銀幹部は、「この1、2年は表立った動きがなく、今回の破綻は正直サプライズだった」と話す。だが、ユニゾの破綻は決して突然死ではなかった。

 債権者向け資料によれば、ユニゾは2022年初めからスポンサーを探していた。私的整理を念頭に10社程度と交渉したが、ユニゾに手を差し伸べる企業は現れなかった。  ユニゾは2023年2月にアドバイザーにKPMG FASを選任。ホテル事業を展開、あるいは新規参入に意欲を示し、意思決定が迅速なオーナー企業に焦点を定めた。国内の不動産会社やホテル運営会社、ノンバンクなどに買収を持ちかけ、一部の企業とは守秘義務契約の締結まで至るも、支援は見送られた。

 3月に入り、資金繰りに窮したユニゾはスポンサー候補を投資ファンドにも広げ、民事再生法の適用を申請した4月26日にホテルや観光業への投資実績のある日本産業推進機構(NSSK)と基本合意書を締結。6月にもNSSKと正式にスポンサー契約を結び、経営再建に向けて動き出す。  ユニゾの財務状況は金融機関も把握できていたはずだ。ユニゾが倒産に至るまでの金融機関のモニタリングや対応が適切だったか、再考の余地は残る。

■リスクはまだ残っている

ほとんどの金融機関は、債権が引き当てや担保により保全されているというが、これで損失が一巡したという保証はない。  1つは、HD子会社であるユニゾ不動産及びユニゾホテルへの融資だ。金融機関が引き当てた債権はあくまでHD向けであり、2社への債権には大幅な引き当てを行っていないところもあるようだ。  子会社向けの債権を有する地銀幹部は「HDを建て直すには、子会社の財務体質も議題に挙がるだろう。債権放棄は飲めないが、条件変更程度は覚悟しないといけない」と話す。

 一部の金融機関が担保に設定しているユニゾのオフィスビルやホテルの扱いも容易ではない。一般的に、担保権は民事再生手続とは関係なく行使できるが、思惑通りに実行できるかは不透明だ。2~4番抵当まで打たれている物件も多く、売却までこぎつけたとしても後順位の金融機関は十分な弁済が受けられない可能性がある。  再生計画は年内にも策定される方針だ。再建の可否に神経を尖らせるのはユニゾだけでなく、金融機関も同様だ。

東洋経済オンライン/ 2023年5月11日

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