~ 2023年上半期(1-6月)「保険代理業の倒産動向」調査 ~
生命保険、損害保険を扱う「保険代理業」の倒産が、 2023年上半期(1-6月) は16件(前年同期比166.6%増、前年同期6件)と大幅に増加、前年同期の2.6倍に達した。このままのペースで推移した場合、2001年(25件)を上回り、過去最多を更新する可能性も出てきた。
人口が減少するなか、保険市場ではネット完結型保険の登場や新商品の投入、大手事業者の出店攻勢などが広がり、顧客開拓は激しさを増している。加えて、コロナ禍で対面営業が難しくなり追い打ちをかけた。
一方で、負債総額は4億3,600万円(同32.5%増)で、平均負債は2,700万円と小・零細規模の倒産に集中し、前年同期(5,400万円)から半減した。
保険代理業は、設計が複雑な保険商品の特性上、加入に際して相談しながら検討したい顧客ニーズを取り込んで成長してきた。また、最近は複数の保険商品を比較する「保険ショップ」も定着し、大手事業者の多店舗展開が進んでいる。
少子高齢化の背景もあり、保険会社のサイトからインターネット経由での直接契約や保険以外の業種からの参入も増え、競合は激しさを増している。こうした状況下でのコロナ禍は対面営業が制約を受け、契約数の確保がより難しくなった。大手代理店はWeb窓口と来店型ショップの両輪でシェア維持を図るが、経営余力の乏しい中小・零細企業はジリ貧に陥っている。
一般社団法人生命保険協会の「生命保険の動向(2022年版)」によると、代理店数は2017年度(8万8,650店)から2021年度(8万537店)にかけて8,113店減少(9.1%減)した。今後も淘汰は続くとみられ、小・零細代理店を中心に倒産や廃業の増加が進む可能性がある。
本調査は、日本標準産業分類に基づき、「保険媒介代理業」の倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。
保険代理業の倒産、上半期で16件
2023年上半期(1-6月)の「保険代理業」倒産は16件(前年同期比166.6%増)で、前年同期の2.6倍に急増した。上半期としては2004年、2006年に並ぶ水準で、リーマン・ショック時をしのぐ過去最悪ペースをたどっている。
すでに前年(2022年、11件)を半年間で5件上回っている。このペースで倒産発生が推移すると、保険代理業の倒産集計を開始した1989年以降、最多だった2001年(25件)を上回り、初めて30件台に乗せる可能性も出てきた。
一方、保険代理業の休廃業・解散は、2021年に過去最多の507件を記録したが、2022年は一転して446社(前年比12.0%減)と減少に転じた。しかし、2019年以来、4年連続で400社を上回って推移し、倒産だけでなく休廃業・解散による市場撤退も高止まりしている。
【原因別】「販売不振」が約9割
原因別では、最多は「販売不振」の14件(前年同期比250.0%増、構成比87.5%)で、全体の約9割を占めた。コロナ禍前よりネット販売や同業大手との競合で売上ジリ貧に陥っていたほか、コロナ禍に伴う来客数の減少が経営破たんへの背中を押した格好となった。
このほか、グループ企業の倒産に連鎖した「他社倒産の余波」、代表者の体調不良による「その他(偶発的原因)」が各1件(共に前年同期ゼロ)発生した。
【負債額別】負債1億円以上の倒産は発生なし
負債額別は、負債1千万円以上5千万円未満が13件(前年同期比333.3%増)で、全体の8割(構成比81.2%)を占めた。次いで、5千万円以上1億円未満が3件(同18.7%)で続き、1億円以上の倒産は発生しなかった(前年同期1件)。
2023年上半期で最大の倒産は、1月に破産開始決定を受けた(株)ゼネラルマネジメントサービス(TSR企業コード:190087048、青森県)で、負債総額は約8,000万円。生命保険会社、損害保険会社の代理店として展開し、タクシー会社や一般個人などを顧客にしていたが、近年は契約数の低迷から減収が続いていた。
出典:東京商工リサーチ