2020年の負債1000万円未満の倒産

はじめに

2020年の負債1000万円未満の倒産件数が630件と急増しています。2000年以降で年間最多だった2010年を上回って初めて年間600件を超えました。

飲食が最多

業界別では新型コロナウイルスの影響が深刻だった飲食業・宿泊業を含むサービス業で300件。この件数は負債1000万円未満の倒産の総数の47.6%程度にまで上ります。飲食業・宿泊業・繊維業・繊維衣類卸売業・アパレル関連などの倒産件数が増えています。やはり個人消費が軒並み前年を下回ったのが原因で倒産が増えました。倒産の原因としては、売れ行きが悪かった販売不振が450件程度と最も多く、また業歴が浅く基盤を立て直せないままに倒産をしてしまったところが事業上の失敗が38件も発生しています。

行政支援によって倒産は減少も

コロナ渦で金融機関による積極的な資金繰り支援が奏功して倒産企業の総数はバブル期並みのレベルです。逆に負債1000万円以下の小規模倒産は2020年が初の600件に入ってしまうという対照的な結果になりました。ただ年明けになって首都圏や京阪神・愛知岐阜などにも緊急事態宣言を出しました。また地方では独自の緊急事態宣言を検討している自治体もあります。今後も新型コロナ感染拡大の第三波の影響が広がっています。もともと資本が小さく経営基盤が脆弱な小規模零細企業の経営環境はより厳しさを増しています。売上回復も進まずにコロナの支援だけでは資金繰り維持が出来ない企業も増えてきています。そこから負債1000万円未満の倒産増加を招いているとも考えられます。

緊急事態宣言を境に増加

2020年の1000万未満の倒産件数は630件と前年比20%の増加になりました。2000年以降では2010年の537件を大幅に上回って年間ではじめて600件に到達しました。四半期では1月から3月の134件、その後緊急事態宣言がされた後は4月から6月の168件、7月から9月の187件とどんどん増えました。その後GOTOキャンペーンを行った10月から12月期は140件に縮小しました。新型コロナの第三波襲来でクリスマス商戦や年末年始商戦の売上が消失したほかに後継者不在で事業承継が進まない小規模零細企業は多く今後の動向が注視されます。

産業別では建設業・小売業・金融保険業・不動産業を除く6業種で前年以上の小規模倒産件数となりました。その中でもサービス業が全体の半数近くの300件に到達。農・林・漁・鉱業、製造業、卸売業、運輸業、卸売業繊維・衣服等卸売業などが前年を上回っています。

10産業の中で6産業で増加

倒産の内容は破産が97%程度とほとんどでした。次に民事再生法の13件とすべてが個人企業の小規模個人再生手続きになりました。また金融機関の取引停止処分や特別清算での倒産も少数ながらありました。体力の少ない小規模零細企業が業績の先行きを見通せずに破産によって事業継続を断念するケースが大半でした。代表者の個人破産や経営者の死亡さらには休眠会社などの清算もありました。

資本金1000万円の企業が大半

資本金別に比較すると1000万円未満が581件と全体の9割以上を占めています。その中でも個人企業が全体の3分の1ほど、100万円から500万円規模の会社が3分の1ほど、また500万円から1000万円未満の会社が全体の1割程度ありました。また1000万円から5000万円未満の会社も7%ほど、5000万円から1億円未満の会社も1社ありました。ただ1億円以上の会社の小規模倒産はありませんでした。

増加の件数が上回る

都道府県別では増加が23、減少が20、変わらずが4と増加がわずかに上回りました。特に栃木県は前年比4.4倍、静岡県は同3.5倍、福岡県は同2.5倍、神奈川県は2倍などとかなり高くなりました。また東京・兵庫・大阪なども前年比を上回っています。大都市とその周辺で増加している傾向があります。ただ北海道・広島・愛知などでは減少となっています。

参考資料・出典
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210113_03.html

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