はじめに
企業が取引先への支払いを考えていく上での約束手形を経済産業省は2026年をめどに利用の廃止を目指していく方針としています。産業界に対応を要請していきます。全国の銀行協会も連携して銀行振り込みや電子記録債権・電子手形への移行を促していきます。
全国の銀行協会も連携して銀行振り込みや電子記録債権への移行を目指していきます。約束手形は一般に現金化まで数か月はかかります。受注側の中小企業の資金繰りを圧迫しがちな古い商慣行の改善に向けて動き出していきます。
手形取引の過去と現在
手形による取引は明治時代の手形交換所以来の日本独特の商慣行といえます。取引先への支払い猶予で経済の成長期には手元の資金に余裕のない発注企業の資金繰りになってきました。ただ近年は受注側の中小企業がしわ寄せを受ける非効率な取引の一因にもなってきました。
海外ではあまり使わない
海外では支払い手段に手形を使う例があまり見られません。また取引先の支払いのサイクルも早くなる傾向があります。アメリカでは小切手・銀行振り込みなどが主流になります。欧州でも振り込みやクレジットカード決済などが多いということです。経済産業省によると産業機械や建設機械などの多くの業種で欧米企業の支払い期間は日本よりも数十日も平均して短いとのことです。
経済産業省の有識者検討会は近日中に手形の廃止に向けての報告書案を出します。業務や部品を下請けに発注する大手企業から手形の利用をまず辞めるように促していくとのことです。その代替手段として振り込みや電子手形への移行を進めていくための業界ごとに5年間の行動計画の策定を求めていきます。
経産省では
経産省では銀行振り込みによる支払いを広げていきます。すぐに手形利用をなくすことが難しい企業には電子手形に切り替えていきます。経産省の方針を踏まえて全国の銀行協会は電子手形の仲介インフラである「でんさいネット」というものを使いやすくしていきます。今では決済期限を最短で7営業日としています。小規模企業の資金需要にきめ細かく応じられないという欠点がありました。22年度に3営業日から活用できるシステムに改修していきます。
また今までの割高といわれている利用料も改善していきます。メガバンクでは他行あての送金が800円前後と一般に紙の手形の方が安く利用できるために広がりませんでした。2021年度は新規の利用者に利用料の一部を現金で還元をしていきます。早期の値下げの検討を進めていきます。インターネットバンキングの契約が必須の仕組みも改めていく方針です。
電子手形にするメリット
電子手形に移行すると紙をやり取りしていくコストを減らせるメリットがあります。紙の手形は印刷から受け渡して金庫での保管などまでに物理的に手間や費用がかかります。金融機関は手作業で全国の送り先に仕分けていくセンターを設けています。この点で大きな事務負担になっていました。
手形の支払残高は25兆円程度
法人企業統計によると手形の支払残高は19年度で25兆円になります。100兆円規模であった1990年前後のピークからは減っています。近年はほぼ横ばいで減少ペースが鈍くなっています。経済産業省の調査では代金の支払い方法をすべて現金払いとしていた企業は全体の5割程度で手形の決済期限は平均で110日前後となっています。
約束手形のデメリット
約束手形は受注企業にとっては商品の納入と代金の確保に時間差が生じて資金繰りが苦しくなりやすくなります。経済産業省は最長で120日としている手形の期限を2024年までに最長60日にまで短縮をしていく方針を決めています。
参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF172XT0X10C21A2000000/