米連邦準備制度理事会(FRB)は3日、連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の追加利上げを決めた。相次ぐ米中堅銀行の破綻で銀行業界の動揺が続くものの、インフレ抑制を優先した。ただ、信用不安が米景気の先行きに影を落とす中、FRBは利上げ「打ち止め」のタイミングを慎重に探る局面に入った。
◇増える「ゾンビ銀行」
「銀行業界は3月初め以降、幅広く改善している」。パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、ファースト・リパブリック銀行が1日に経営破綻したことで高まった信用不安の払拭(ふっしょく)を図った。だが、株式市場ではこの日も地銀株が下落。米メディアは、株価が急落した中堅行パックウエスト・バンコープが身売りを含む「戦略的な選択肢」を検討していると報じた。
3月のシリコンバレー銀行(SVB)から続く米銀破綻は、FRBが40年ぶりの高インフレを封じるため、急激に利上げを進めたことが一因だ。政策金利は事実上のゼロから1年余りで計5%も引き上げられ、長年続いた低金利環境が一変。債券価格が下落し、各行が保有する債券に含み損が生じた。金利上昇で不動産市況が悪化しており、商業用不動産向け融資の焦げ付きも銀行経営の重荷になると取り沙汰されている。
米不動産業者協会(NAR)の主任エコノミスト、ローレンス・ユン氏は「規模の小さな地銀の多くは本来なら破綻してもおかしくないのに存続している『ゾンビ銀行』となり、優良事業に融資できなくなっている」と指摘。「FRBが利上げをするたびに状況は悪化する」と警告した。
◇物価動向がカギ
FRBも、銀行の「貸し渋り」が広がり、想定以上に景気が冷え込むリスクを警戒する。FOMC声明からこれまでの「追加の政策引き締めは適切と予想している」との文言が消え、今後、利上げがいったん停止される可能性が示唆された。
パウエル氏は「中小金融機関は融資基準を厳しくする必要があると考えている」と明言。銀行の融資動向が景気に影響することから、今後の政策運営で考慮に入れる考えを示した。
ただ、米国では依然としてインフレ圧力が根強い。FRBが利上げの停止、さらには利下げへと政策転換に踏み切るかは物価次第だ。パウエル氏は「インフレはそれほど速く後退しないとみており、利下げは適切ではない」と、市場の一部観測を一蹴した。だが、物価上昇が予想外に鈍化すれば「利下げを織り込むだろう」と認めた。(ワシントン時事)