2020年度の上場外食業者動向調査・2020年度は総売上9000億円の消失

はじめに

緊急事態宣言は沖縄を除いて解除されたものの、営業時間の短縮や酒類の提供の制限などの通常通りの営業にはまだ至っていません。依然として居酒屋業態を中心に大きな影響を及ぼしています。1年間余りで各外食事業者はテイクアウトの拡充や業態の変更さらに店舗数の削減などの様々な対策を講じてきました。特に3月期決算の企業はコロナ渦の1年間を経ての決算になります。その影響で各企業の対応の効果などが表れてきています。帝国データバンクは、上場外食業者の2020年度(2020 年 4 月期~2021 年 3 月期)の決算短信から、連結ベースでの売上高及び営業利益について調査・分析しています。

※調査対象は上場外食業者94社、総売上高は連結子会社が上場している場合は連結子会社の売上高を除いた88社の合計、店舗数はは各社リリースの決算短信・有価証券報告書・月次発表データなど。

調査結果の要旨

1:2020年度の総売上高はおよそ3兆9797億300万円で前年度のおよそ4兆8888億900万円から9091億600万円ほど減少しています。上場の外食会社94社で2020年度減収となった企業が84社(89.4%)。一方で増収となって企業は10社(10.6%)。3月期決算の45社では42社が減収で増収が3社となっています。

2:減収となった84社の減収幅を見ていくと、10%台で18社と最も多くなっています。以下30%台で15社、20%台が14社と続いています。

3:上場外食会社94社の営業利益をみていくと、赤字企業は72社(76.6%)。黒字企業は22社(23.4%)となっています。3月期決算の45社をみていくと40社で赤字。黒字の企業は5%にとどまっています。

4:2020年度末および2019年度の店舗数の判明した90社を見ていくと、2020年度末時点で前年度よりも店舗数が減少した企業は62社(68.9%)となっていきました。一方で増加した企業は23社(25.6%)で横ばいが5社となっています。

5:2021年3月期の決算短信で2022年3月期の業績の見通しを発表した企業は45社中24社。その24社すべてが増収を見込んでいます。残りの21社は未定となっています。

売上高動向

2020年度の上場外食業者の総売上高はおよそ3兆9797億300万円と前年度のおよそ4兆8888億900万円から9091億600万円ほど減少しました。上場外食企業94社の2020年度の売上高を2019年度と比較すると、減収企業は 84 社(89.4%)で、増収企業は10社(10.6%)と減収企業が9割ほどになっています。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛・営業時間短縮・営業自粛要請などによって営業を制限されたことが大きく影響しています。

増収企業をみていくとコロナ渦からの巣ごもり需要によるテイクアウト需要を獲得した日本マクドナルドホールディングス、モスフードサービス、日本KFCホールディングス。ロードサイド需要を獲得したアークランドサービスホールディングス、積極的な新規の出店を行って2020年9月に東証1部に市場変更をしたギフトなどが名を連ねています。

決算月別に見ていくと3月期決算の企業が45社と全体の過半数を占めています。そのうちで42社が減収。増収はわずかに3社にとどまっています。

減少幅変動

減収となっている84社の減少幅をみていくと、10%台が18社で最多となっています。次いで30%台が15社、20%台が14社となっています。また50%以上の減少となった19社を見ていくとすべてが2020年12月期の以降の決算の企業でした。居酒屋などの酒類の提供を伴う飲食店を運営している企業が大半を占めています。新型コロナウイルスの影響が大きく表れています。また減収となった企業の中で3月期決算の企業42社の減少幅をみていくと、30%台が9社となっています。次いで10%未満が8社、20%台と40%台が6%と続いています。

営業利益動向

上場外食企業94社の2020年度の営業利益をみていくと、赤字企業は72社(76.6%)と黒字企業22社(23.4%)を大きく上回っています。19年度は黒字企業78社(83.0%)赤字企業(17.0%)と真逆になってしまいました。増収増益企業は日本マクドナルドホールディングス、モスフードサービス、日本KFCホールディングス、アークランドサービスホールディングスの4社となっています。また3月期決算の45社を見ていくと、40社(88.9%)が赤字となっていて、黒字の5社(11.1%)にとどまっています。

業績見通し

2021年3月期の決算短信で業績の見通しを発表した企業は45社のうちで24社すべての企業が増収を見込んでいます。一方で他の21社は「新型コロナウイルスの収束時期によって業績に与える影響が大きく変動するので業績の予想は困難」としています。

店舗数動向

2020年度末及び2019年度末での店舗数の判明した90社をみていくと、2020年度末時点で前年度よりも店舗数が減少した企業は62社(68.9%)。一方で増加となった企業は23社(25.6%)で5社は横ばいでした。
店舗数が増加した企業の特徴はコロナ渦でも積極的な出店を続けたところ、コロワイドは大戸屋ホールディングス、安楽亭はアークミール、アークランドホールディングス株式会社は期中に連結の子会社にするなどで、連結子会社の増加に伴っての店舗数の増加に見られています。

一方で不採算店舗の閉店に加えて、期中にペッパーフードサービスは大幅な減少となりました。JFLAホールディングスも事業譲渡やブランドリストラクチャリングや店舗撤退の影響で減少となっています。チムニーは新ブランドの展開などで一部の店舗は増加するも、「はなの舞」や「さかなや道場」などの閉店によって総店舗数は減少となりました。

まとめ

上場外食業者の2020年度の総売上高は前年度よりも9000億円ほど減少しています。企業別では上場外食会社の9割近くで前年度よりも売上高が落ちています。新型コロナウイルスの感染拡大の影響による外出の自粛や営業時間の短縮さらに営業の自粛などによって営業の制限を余儀なくされた影響の大きさを表しています。特に減少幅が50%以上の企業の大半が居酒屋などの酒類の提供を伴う飲食店を中心に展開をしていく企業となっています。GoToイートキャンペーンによって客足の回復の兆しが見え始めた矢先に感染第三波が発生、忘年会や新年会・歓送迎会を自粛する動きが強まったことで、需要が消失したことが影響を及ぼしています。

3度目の緊急事態宣言以降も酒類提供に制限が設けられていて、居酒屋業界全体に大きく影響を及ぼしています。一方ステイホームによる消費動向の変化にいち早く対応して、デリバリーやテイクアウトの強化、ドライブスルーの対応が可能なロードサイド店舗の拡充などにより客数の獲得に成功した企業はコロナ禍を追い風として業績を伸ばしています。明暗が分かれた結果となりました。

また3月期決算の企業のおよそ半数が業績の予想を未定にしているところからも、先行きの見えない状況が続いています。ワクチン接種の加速で状況の好転も期待されます。ただ感染者数が再び増加傾向に転
じている状況もあって営業時間のさらなる短縮や酒類提供の制限の動向もカギになってきそうです。

今後はウイズコロナ・アフターコロナなどの経営戦略も求められます。各社のさらなる業態の転換や店舗戦略さらにネットオーダーなどのIT技術の促進などが打ち出されています。業績の回復とさらなる発展を目指しています。消費者のマインドの停滞が続く中でいかにニーズを確保することができるか、各社の戦略にも注目が集まっています。

参考資料:2020年の業績

上場外食会社94社の業績動向を表にして紹介します。

参考資料・出典
帝国データバンク:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p210608.pdf

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