日本経済はK字回復に向かっているか?

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はじめに

新型コロナウイルスの影響で、世界経済はK字回復に向かうと一般的に言われていますが、日本経済はどうなのでしょうか?2021年度の企業決算の数字も発表されてきており、日本経済はK字回復に向かっているのか見ていきたいと思います。

K字回復とは

まず、K字回復とはどのようなものでしょうか?今まで景気を表す折れ線グラフはV字、U字、W字、L字が一般的に用いられてきました。まず、V字型は景気が短期間に急激に後退し(右肩下がり)、底をつくと急激に好況(右肩上がり)になるパターンです。U字型はV字型とは違って景気の底をつく期間が長いのが特徴です。次にW字型というのは回復した地点から再び短期間で後退し、その後好況に転じるパターンです。L字型というのは短期間で景気が後退し、底をつくも停滞の状況が長期間にわたって続くもので、景気後退の形状を表す折れ線グラフの中では最も厳しいものです。まさに1990年以降のバブル崩壊後、「失われた20年、30年」と言われる長期のデフレーション状態の日本経済はL字型と言えるでしょう。そして最近注目を浴びているのが、不況から回復できる業種と、回復出来ずに落ち込む業種の二極化が進むK字型パターンです。右上に伸びる線が業績を伸ばす勢力、右下に伸びる線は業績が落ち込む勢力で、経済が分断されている状況を示します。このK字型パターンになるかどうかは製造業が主体か、非製造業が主体か、またはIT分野に強いか、弱いかなど、その国の産業構造の違いによって異なってくるでしょう。

年率3%超のマイナス成長

国際通貨基金(IMF)が4月6日に発表した最新の世界経済見通しでは、2020年の世界経済成長率はマイナス3.3%と、第二次世界大戦以降で最悪を記録したものの、2021年の世界経済(実質GDP)の成長率は6.0%になると見通しています。しかし、ワクチン接種が大幅に普及し、巨額の財政支援を行っている米国などはV字回復が期待されています。そんな中、ワクチン接種が大幅に遅れている日本の2020年の経済成長率は3.3%と主要先進国で最も低く、世界から取り残されつつあります。

増益を確保

SMBC日興証券によりますと、決算発表した1033社のうち、50%にあたる519社が、最終損益で「増益」を確保しました。アメリカや中国への輸出が回復したことで、電機や自動車、それに半導体などの「製造業」では増益が目立ちました。また、テレワークが進んだことなどで、「情報・通信業」も好調でした。

減益と赤字

これに対し「減益」企業は35%に当たる370社、「赤字」企業は13%に当たる135社でした。「非製造業」は、航空や鉄道のほか、外食などで厳しい決算が相次ぎました。

二極化が鮮明

新型コロナウイルスの影響が長期化する中、輸出の増加などの追い風を受けた業種と、移動の制限や時短営業の影響を受けた業種との二極化が鮮明になっており、今のところK字型の回復を示していると言えるでしょう。

自動車業界は堅調

では業種別に見ていきたいと思います。まず自動車業界ではトヨタ自動車が2020年の新車販売で世界第2位の独フォルクスワーゲンを抑えて5年ぶりの世界第1位に返り咲き、グループ全体の最終利益が10%増えて2兆2,452億円と、前年に引き続き2兆円を上回りました。また、ホンダも英国工場の閉鎖、車種モデルの整理、部品子会社群の日立製作所との統合などの構造改革を行い、2021年3月期の連結ベース最終利益は前年比36.4%増の6,954億円と好調でした。但し、全体的に好調な自動車業界の中で構造改革の真っ最中の日産自動車は売上高前期比マイナス20.4%の7兆8,626億円、当期純損失は3,393億円と明暗が分かれました。自動車業界は今後脱炭素社会の中で、ガソリン自動車から電気自動車(EV)への移行もあり、今後の業績に大きな課題を抱えています。

半導体の不足

次に半導体業界ですが、5G、データセンターへの積極的な投資、コロナ禍におけるパソコン、スマートフォンの需要増加に伴い、世界的な半導体不足になっています。半導体製造装置メーカー最大手の東京エレクトロンは、本業の儲けを示す営業利益が過去最高だった上、最終利益も2,429億円と31%増えました。但し、アメリカのバイデン政権が中国に依存しないサプライチェーンの見直しを行っており、今後中国向けへの輸出に規制がかかる恐れもあり、注視していく必要があると思われます。

巣籠り業界は増益に

巣ごもり需要を取り込むことが出来た企業も最終利益が大幅に増えました。ソニーグループは売上高が8兆9,994億円と前年比プラス9%、最終利益は前年比2倍にあたる1兆1718億円となりました。ゲーム機の任天堂は「あつまれ どうぶつの森」や「スーパー・マリオ」シリーズなどのヒットもあり、売上高は前期比34.4%増の1兆7,589億円、最終利益は前年比85.7%増の4,803億円とソニーグループ同様過去最高を記録しました。

旅行や航空は大打撃

一方、感染拡大防止による人流抑制で、旅行需要の激減、テレワークや出張減による乗客数の大幅減少の影響をまともに受けた鉄道、航空業界があげられます。鉄道は、JR東日本の最終損益が5,779億円の最終赤字と、最終赤字となるのは1997年の旧国鉄の民営化後初めてです。他のJR5社と、全国の主要な私鉄15グループもすべて最終赤字に陥りました。航空業界では日本航空が経営破綻後に株式を再上場した2021年以降初めて2,866億円の最終赤字になったほか、ANAホールディングスも過去最大の4,046億円の最終赤字となりました。

アパレルも大苦戦

アパレル業界も新型コロナウイルスで大きな打撃を受けた業界です。緊急事態宣言で時短営業や一斉休業で機会損失を余儀なくされ、大量生産・大規模消費で成り立ってきた業界はビジネスモデルの転換を迫られています。三陽商会は売上高、前年比55%減の379億39百万円、最終損失は49億88百万円と5期連続赤字となりました。20年7月に東京・銀座の自社ビルを売却、21年1月には180人の希望退職を募集しました。売上げ第一主義で過剰生産していた企業があぶり出された状況です。

ワクチン接種での集団免疫の獲得

いずれにせよ、日本経済を正常化に近づけるには、諸外国以上にワクチン接種に伴う集団免疫獲得の必要性が求められます。しかし、人口当たりのワクチン接種率の国際比較をすると、日本の接種率が圧倒的に低いのが現状で、このままでは日本経済の回復が諸外国に比べ大幅に遅れることが懸念されます。V字回復に向かうには一刻も早い日本での集団免疫獲得が期待されます。

以上

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