英国金融会社グリーンシルキャピタル破綻と取引信用保険

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はじめに

2021年3月8日英国の金融会社であるグリーンシルキャピタル(以下グリーンシル)が倒産し、この倒産に関し東京海上ホールディングスの子会社が提供していた取引信用保険が絡んでいたということで、損保業界では大きな注目を集めています。その概要を見てみたいと思います。

グリーンシルとは

グリーンシルは、2011年に英国に設立された金融サービス会社で、主にサプライチェーンファイナンス、売掛金ファイナンスなどを手掛けていました。そのサプライチェーン活動に資金を供給する為にグリーンシルは、クレディ・スイスが管理する専門のサプライチェーン投資ファンドが提供するローンに頼っていました。また、日本のソフトバンクはビジョンファンドを通じて2019年初頭にグリーンシルに8億ドルを投資、さらに2020年6月にはクレディ・スイスの投資ファンドに5億ドル以上を投資していました。

東京海上も案件に関わる

東京海上が本件に関わったのは、2019年4月にオーストラリア保険大手IAGから取引信用保険に強い代理店のBCCを買収したことに遡ります。BCCはグリーンシルの取引信用保険の窓口となっており、引き受けの審査を担当していました。保険はIAGがリスクの大部分を再保険会社などに出していましたが、東京海上はBCCの買収時にIAGが自社で保有していた残りのリスク部分を再保険で引き受けていました。東京海上がBCCとグリーンシルとの契約に問題があると気づいたのは、買収から1年後の2020年5月に限度を超えた引き受けをしていたことが判明したためです。

その為、東京海上は、2020年7月に、2021年3月1日に満期を迎える約5,000億円とされる取引信用保険の契約を更新しないことをグリーンシルに通知しました。グリーンシルは裁判所に更新すべきと異議申し立てを行いましたが、却下されました。また、保険契約の前提となる売掛債権が架空計上されていた疑惑も浮上しました。架空計上であれば、そもそも保険契約が成立していなかった可能性もあります。

経営に行き詰まる

グリーンシル証券化商品の大口提供者であったクレディ・スイスをはじめ運用会社から取引を相次ぎ打ち切られて経営に行き詰まり、2021年3月8日に倒産法に基づく会社管理手続きに入り、実質グリーンシルは破綻しました。この運用会社の取引停止は東京海上のオーストラリア子会社が取引信用保険契約の更新が認められなかったことが引き金になったとされて注目されたものです。

ご注意いただきたいのは、取引信用保険は契約者であるグリーンシルが経営破綻した場合に保険金を支払うものでありません。東京海上が引き受けている再保険も全体の一部に過ぎないようです。東京海上ホールディングスは2021年3月23日付け広報で、「一般に言われている100億ドルなどの数値はBCCを取扱代理店としてIAGおよび東京海上日動が引き受けたグリーンシル社の取引信用保険の対象となる保険期間中に想定される売掛債権額を単に清算した額であり、東京海上日動の保険金支払い想定額ではありません。」と述べ、「以上をふまえ、現時点において、東京海上グループの2020年度通期業績への影響は認められず、また、今後の当社への影響につきましては限定的と考えております。」と発表しています。実態が分かるのは、今後の倒産手続きを見ていかないといけないと思われます。

取引信用保険は世界中で利用されている

いずれにせよ、今回の問題は取引信用保険が幅広く世界中で利用され、巨額取引も行われていることが判明したことです。また取引信用保険取引で保険代理店の限度を超える取引も明らかになり、架空売上債権計上も浮上したことから、取引の厳格な管理体制の必要性も認識されることとなりました。さらに損害保険会社は国内保険事業が災害の多発などで収支が悪化する中、海外事業に活路を見出していることから、海外事業の落とし穴にも留意し、海外事業展開を図っていかなければいけないことも明らかになりました。

最後に、ご参考までに、グルーンシルの出資していたソフトバンクは出資した15億ドルの大半を減損処理したものと思われます。(2021年3月2日付ブルンバーグ記事)

以上

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