~ 2022年度「食品業」の倒産 ~
食料品の価格上昇が続くなか、2022年度の「食品業」の倒産(負債1,000万円以上)は561件(前年度比27.2%増)と3年ぶりに前年度を上回った。ただ、2003年度以降の20年間では、2021年度(441件)、2020年度(550件)に次いで3番目に低い水準にとどまった。
「新型コロナ」関連倒産は268件(前年度比56.7%増)で、前年度(171件)の1.5倍に拡大した。
業態別では、製造業157件(前年度比45.3%増)、卸売業218件(同21.1%増)、小売業186件(同21.5%増)と、全業態で増加した。特に、製造業では、食材価格だけでなく、光熱費などの上昇も大きく、他の業態に比べ伸び率が大きかった。
資本金別は1千万円未満が327件(構成比58.2%)、負債額別も1億円未満が350件(同62.3%)と、それぞれ約6割を占めた。また、形態別では破産が498件(同88.7%)と約9割を占めた。
食品業は、コロナ禍で外食産業での時短営業、イベントの中止などが相次ぎ、業務用の需要が停滞したが、巣ごもり需要や各種資金繰り支援により支えられてきた。
しかし、ここにきて、支援効果の一巡だけでなく、ウクライナ情勢や円安による食材や水道・光熱費の高騰などもあり、価格転嫁が難しい中小・零細企業ほど厳しい状況に置かれている。また、人手確保のための人件費負担も重くのしかかっていて、経営基盤がぜい弱で、コストアップ負担の吸収が難しい中小・零細企業を中心に、倒産件数を押し上げる可能性が高まっている。
※本調査は、日本産業分類の「09食料品製造業」「10飲料・たばこ・飼料製造業」「52飲食料品卸売業」「58飲食料品小売業」の2022年度(2022年4月-2023年3月)の倒産を集計、分析した。
倒産は561件で3年ぶりに増加
2022年度の「食品業」倒産は561件(前年度比27.2%増)で、3年ぶりに前年度を上回った。
コロナ禍初期の2020年度の550件を超えたが、2003年度の以降の20年間では3番目の低水準にとどまった。
業態別では、製造業157件(前年度比45.3%増)、卸売業218件(同21.1%増)、小売業186件(同21.5%増)と、全業態で大幅に倒産件数が増加した。
食品業は、コロナ禍での外出自粛やイベント中止・延期などもあった一方で、巣ごもり需要などの恩恵も受けた。ただ、ロシアのウクライナ侵攻の影響だけでなく、2022年に入り円安が進み、穀物や食材の価格だけでなく、水道・光熱費なども高騰した。このため、価格転嫁が小規模の企業ほど難しく、事業継続に大きな影響を及ぼしている。
【業種別】最多が農畜産物・水産物卸売業の124件
業種別(小分類)では、最多が「農畜産物・水産物卸売業」の124件(前年度比30.5%増、構成比22.1%)で、3年ぶりに前年度を上回った。このほか、「鮮魚小売業」16件(前年度比33.3%増)が2年連続、「野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業」15件(同650.0%増)と「食料・飲料卸売業」94件(同10.5%増)、「各種食料品小売業」35件(同45.8%増)、「野菜・果実小売業」14件(同27.2%増)、「菓子・パン小売業」49件(同22.5%増)が3年ぶり、「畜産食料品製造業」10件(同150.0%増)と「食肉小売業」10件(同100.0%増)が4年ぶり、「水産食料品製造業」39件(同50.0%増)が5年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。
「新型コロナ」関連倒産は、最多が「農畜産物・水産物卸売業」の58件(構成比46.7%、前年度43件)で、以下、「食料・飲料卸売業」45件(同47.8%、同35件)、「菓子・パン小売業」34件(同69.3%、同14件)の順。円安やロシアのウクライナ侵攻などで原材料価格や光熱費が上昇する一方、価格転嫁がなかなか進まず、事業運営に影響を及ぼした。
【原因別】販売不振の構成比が7割超
原因別は、最多が「販売不振」の418件(前年度比29.8%増、構成比74.5%)で、3年ぶりに前年度を上回った。また、「既往のシワ寄せ」が65件(同6.5%増、同11.5%)で、4年ぶりに前年度を上回った。『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は483件(同26.1%増、同86.0%)で、3年ぶりに前年度を上回った。
コロナ禍の長期化や物価高の影響で、業績不振が続く中小企業が多い。
【形態別】法的倒産の構成比が96.0%
形態別では、法的倒産が539件(前年度比26.5%増)で、3年ぶりに前年度を上回った。構成比は96.0%(前年度96.5%)だった。
破産が498件(前年度比35.3%増、構成比88.7%)で、3年ぶりに前年度を上回った。一方、特別清算は28件(前年度比40.4%減)で、2年連続で前年度を下回った。
消滅型は526件(前年度比26.7%増、構成比93.7%)で、3年ぶりに前年度を上回った。
再生型の民事再生法は13件(前年度比30.0%増、前年度10件)で、2年ぶりに前年度を上回った。会社更生法は2年ぶりに発生がなかった(前年度1件)。
このほか、取引停止処分は20件(前年度比66.6%増)で、3年ぶりに前年度を上回った。
【資本金別】1千万円未満が約6割
資本金別件数は、「1千万円未満」が327件(前年度比24.3%増、前年度263件)で、構成比は58.2%(前年度59.6%)と、約6割を占めた。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が173件(前年度比35.1%増)、「5百万円以上1千万円未満」が69件(同38.0%増)、「個人企業他」が62件(同4.6%減)、「1百万円未満」が23件(同15.0%増)だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が210件(同32.9%増)で3年ぶり、「5千万円以上1億円未満」が20件(同25.0%増)で4年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。
「1億円以上」は、前年と同件数の4件だった。
【負債額別】1億円未満が6割、100億円以上は2年連続で発生
負債額別件数は、「1億円未満」が350件(前年度比23.6%増、前年度283件)で、構成比は62.3%(前年度64.1%)だった。このほか、「1億円以上5億円未満」155件(前年度比31.3%増)と「5億円以上10億円未満」34件(同41.6%増)が3年ぶり、「10億円以上」が22件(同37.5%増)で2年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。100億円以上は1件で、2年連続で発生した。
【地区別】9地区のうち、東北、中国、四国を除く6地区で増加
地区別は、9地区のうち、東北、中国、四国を除く6地区で増加した。
北海道34件(前年度比41.6%増)が、2年連続で前年度を上回った。また、中部84件(同104.8%増)と北陸15件(同36.3%増)、近畿108件(同24.1%増)、九州66件(同15.7%増)が3年ぶり、関東が177件(同31.1%増)で6年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。
一方、東北が36件(同5.2%減)で2年ぶり、四国が9件(同43.7%減)で3年連続で、それぞれ前年度を下回った。中国は、前年度と同件数の32件だった。
都道府県別件数の増減率(件数10件以上)では、増加が三重266.6%増(3→11件)、茨城120.0%増(5→11件)、静岡115.3%増(13→28件)、愛知84.6%増(13→24件)、岐阜75.0%増(8→14件)、長崎62.5%増(8→13件)、神奈川58.3%増(24→38件)、北海道41.6%増(24→34件)、京都36.3%増(11→15件)、兵庫35.2%増(17→23件)、福岡33.3%増(21→28件)、埼玉25.0%増(16→20件)、東京24.5%増(53→66件)、大阪21.7%増(46→56件)、広島18.1%増(11→13件)。
一方、減少は宮城35.2%減(17→11件)、千葉9.5%減(21→19件)。
出典:東京商工リサーチ