2022年度の「ゼロ・ゼロ融資後」倒産は541件発生、前年度から3.6倍増 2020年以降の累計は744件に

~ 2022年度(4-3月)「ゼロ・ゼロ融資後」倒産 ~

 2022年度(4-3月)の 実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)を利用後の倒産は541件(前年度比260.6%増)で、前年度の3.6倍増と急増した。月次では2022年9月に初めて50件を超え、増勢ピッチを強めていたが、2023年3月は63件(前年同月44件)と月間最多を更新した。
 コロナ禍の資金繰り支援策としてゼロ・ゼロ融資は倒産抑制に大きな効果を見せた。だが、同時に過剰債務という副作用をもたらした。ポスト・コロナに向け、業績回復の見通しが立たない企業は債務の圧縮に苦慮し、息切れ倒産が頻発している。 ゼロ・ゼロ融資を利用後の倒産は、累計744件に達した。

産業別では、居酒屋など飲食業88件(構成比16.2%)を含むサービス業他が177件(同32.7%)で最多だった。客足が戻らないところへ、食材費や光熱費の高騰、人手不足に伴う人件費の上昇などのコストアップが重なり倒産が広がった。
今年5月には新型コロナが5類に指定変更となり、コロナ禍も出口が見えつつある。だが、その一方で、企業を取り巻く環境は、物価高や人手不足などのコストアップ負担を吸収できず、収益改善が進まない企業は多い。これからゼロ・ゼロ融資は返済のピークを迎える。元本返済と金利負担から資金繰りに窮する企業がさらに増えることが危惧される。
政府は、ゼロ・ゼロ融資の借換保証制度を2023年1月から開始した。しかし、コロナ禍で疲弊した多くの企業には、制度の利用に必要な経営行動計画などの策定・実行はハードルが高い。すでに自助努力が限界に達し、支援の網から漏れる企業への新たな支援策も検討が必要だろう。

  • ※ 本調査は、企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」を受けていたことが判明した倒産(法的・私的)を集計、分析した。

2022年度の「ゼロ・ゼロ融資」を利用した倒産は541件、前年度から3.6倍増

 2022年度の「ゼロ・ゼロ融資」利用後の倒産は541件(前年度比260.6%増)で、前年度(150件)から3.6倍と大幅に増えた。2022年後半から増勢が強まり、2023年3月は月間最多の63件(前年同月44件)が発生した。
負債総額は、1,355億300万円(前年度比111.0%増)で、前年度(642億1,900万円)の2.1倍増となった。平均負債額は2億5,000万円で、前年度(4億2,800万円)より減少し、小規模倒産が広がりをみせた。

ゼロゼロ融資

【産業別】最多はサービス業他、10産業すべてで発生

 産業別では、最多がサービス業他の177件で、3割(構成比32.7%)を占めた。このうち、居酒屋などの飲食店や持ち帰り飲食サービス業を含む飲食業が88件(前年度比486.6%増)で約半数(構成比49.7%)を占めた。
次いで、建設業92件(前年度比217.2︎%増)、卸売業84件(同425.0︎%増)、製造業81件(同170.0%増)、小売業54件(同260.0︎%増)、運輸業34件(同277.7︎%増)、情報通信業10件(同900.0︎%増)、不動産業7件、農・林・漁・鉱業と金融・保険業が各1件の順。

ゼロゼロ融資

【業種別】最多は飲食店

 業種(中分類)別では、居酒屋を含む「飲食店」が71件(前年度比446.1%増)で最多。このほか、「食料品製造業」26件(同225.0%増)、「飲食料品卸売業」24件(同380.0%増)など、外出自粛で打撃を受けた飲食業など、食料品関連業種が上位に入った。
次いで、「総合工事業」が41件(同173.3%増)、「職別工事業」31件(同210.0%増)、「設備工事業」20件(同400.0%増)が目立った。人手不足に加えて、資材値上げや調達遅れに伴う工事延期なども影響した。
また、人手不足と燃料代が上昇した「道路貨物運送業」は24件(同300.0%増)だった。

【負債額別】負債1億円以上が過半数

 負債額別では、1億円以上5億円未満の214件(前年度比229.2%増)が最多で、約4割(構成比39.5%)を占めた。
次いで、1千万円以上5千万円未満が151件(同27.9%)、5千万円以上1億円未満が111件(同20.5%)、5億円以上10億円未満が41件(同7.5%)、10億円以上が24件(同4.4%)。
1億円以上が279件(同51.5%)で過半数を占め、2022年度企業倒産の構成比(27.2%)を大きく上回った。

ゼロゼロ融資

【形態別】破産が9割を超える

 形態別では、最多は消滅型の破産が494件(前年度比263.2%増)で、9割超(構成比91.3%)に達した。ほかに消滅型では特別清算が7件発生した。
一方、再建型の民事再生法は11件(前年度比120.0%増)で、会社更生法は前年度と同様に発生しなかった。
このほか、取引停止処分が27件(同285.7%増)、内整理が2件。

【従業員数別】10人未満が約7割

 従業員数別では、最多は5人未満の256件(構成比47.3%)で、約半数を占めた。5人以上10人未満が117件(同21.6%)で続き、10人未満が約7割(同68.9%)を占めた。
このほか、10人以上20人未満が102件(同18.8%)、20人以上50人未満が47件(同8.6%)、50人以上300人未満が19件(同3.5%)で続く。
300人以上の大型倒産は、前年度と同様に発生しなかった。

【地区別】最多が関東の204件

 地区別では、最多が関東の204件(前年度比603.4%増)で約4割(構成比37.7%)を占めた。
次いで、九州107件(前年度比143.1%増)、東北66件(同127.5%増)、近畿57件(同307.1%増)、中部47件(同422.2%増)、北海道29件(同625.0%増)、中国12件(同9.0%増)、北陸11件(同266.6%増)、四国8件(同14.2%増)で続く。

都道府県別では、最多が東京の97件(前年度比506.2%増、前年度16件)。以下、埼玉53件(同1666.6%増、同3件)、福岡44件(同144.4%増、同18件)、北海道29件(前年度625.0%増、同4件)、宮城県(同154.5%増、同11件)と大阪府(同366.6%増、同6件)が各28件の順。

出典:東京商工リサーチ

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