はじめに
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で企業が売掛債権を回収できない事態に備えるためのファクタリングの利用が広がっています。イーギャランティ・三菱UFJファクター・三井住友銀行・みずほファクター・りそな決済サービスといったファクタリングの主要5社の保証残高は1兆7600億円程度と前年同期に比較して8%ほど増えています。
飲食や観光業などが多く利用
特に飲食店やホテルなどと取引する卸売業などからの依頼が相次いでいます。経営の先行きが見通すことのできない苦境の根深さを映しています。緊急事態宣言の出た20年春以降は8%から10%程度の高い水準で推移しています。これらの業界との取引の多い企業からの相談が増えているとのことです。食材などの卸売業者・ホテル・寝具業者などからの問い合わせも多いとのことです。また以前から業績の悪化していたアパレル業界も今回のコロナで相当のダメージを受けているところも多いです。これらの業界から相談や保証の案件が多く来ています。
ファクタリングとは
ファクタリングとは取引先の倒産などのリスクに備えるために、企業が抱える売掛金や受取手形の現金化を保証していくサービスです。端的に言うと取引先の企業が経営破綻をした場合に、あらかじめ企業と補償会社との間で決めていた額の範囲内で売掛債権の一部を企業に支払います。企業は保証会社に安心料ともいえる保証料を支払います。その保証料は取引先の信用力に応じて変わります。だいたい保証額の1%から2%程度が一般的といえます。当面の資金繰りをしのぎたいという企業から債権を買い取って現金化していく買取型と言うものもあります。
ただ保証会社が取引先の財務状況を見て、危ないから保証できないという事例も少なくないとのことです。
取引先の債務不履行の相談も多く
売掛債権の保証の相談が多くなっているのはもちろんなのですが、その他に取引先の債務不履行に備えていくための保険の契約も増えてきています。東京海上日動火災保険会社は取引信用保険の保険料の収入が暖候期で前年度2割弱の伸びを示しました。同様に三井住友海上火災保険も15%強ほど契約数が増えています。また損保ジャパンは見積件数が前年度比で2倍程度になっています。あいおいニッセイ同和損害保険は同様の保険に入る企業からオンラインで売掛債権を買い取って期日前に現金化をしていくサービスを9月に始めています。
倒産数は意外に少ない
保証会社が債務を肩代わりするにも限界があります。保証会社によっては肩代わりの件数が前年比で半数以下になったところもあります。現時点では政府や日銀などの貸し出し支援で生き延びている企業が多くなっているためか倒産件数は予想外に少なくなっています。ただファクタリングを利用する会社が今後もどんどん増えることが予想されます。そうなると中小企業を中心に売掛を回収できない・返済できないという中小企業が多くなるのではないかとイーギャランティの江藤社長は分析しています。
参考資料・出典
日本経済新聞:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF044510U0A201C2000000