宿泊業の倒産は49件に減少、中小・零細規模の息切れが目立つ

はじめに

2021年1月から7月までの負債1000万円以上の宿泊業の倒産は合計で49件と前年の同期比の79件に比較すると37.9%減と大幅に減少しました。半数以上の27件が新型コロナウイルスの影響となっています。長引くコロナ渦の影響が深刻となっています。月を追うごとにコロナ関連の倒産の比率が高まっています。

2020年の新型コロナウイルスの感染拡大でインバウンドの需要が消失、国内では緊急事態宣言の相次ぐ発令などで人の移動が大幅に制限されています。また2020年7月には政府の「GO・TO・キャンペーン」が開始されるもコロナ波によって11月には停止がなされています。

政府の支援策で倒産は抑制

政府の積極的な資金繰りの支援策に加えて、持続化の給付金や雇用調整の助成金などの支援で一時的に資金繰りが緩和されて倒産のペースが抑えられています。ただコロナ慣れ・自粛疲れなどから緊急事態宣言やまん延防止などの重点措置地域以外の方の外出の動きもあって、新型コロナの感染者数は8月に入って急増しています。

2021年の倒産も記録的な低水準も

2021年の企業の倒産は記録的な低水準が続くも、2021年4・5月を除く月ごとの宿泊業の倒産は半数以上がコロナ関連の倒産で長期化するコロナ渦で宿泊業の疲弊感は高まっています。観光業界の業況回復見通しは依然として不透明と言えます。宿泊業者の経営努力は当然ですが、これだけでは効果は限定的といえます。周辺地域を巻き込んだ集客策も欠かせません。業界の事業構造の転換だけではなく、自治体も参加した弾力的な支援策が求められています。

コロナ関連の倒産が過半数

2021年1月から7月の宿泊業倒産は累計で49件で2年ぶりに前年を下回っています。前年同期は新型コロナウイルスの感染の拡大が始まったところで倒産が急増するも、政府や金融機関などの支援の効果で2020年後半以降の倒産は抑え込まれています。

負債総額は1203億3600円で前年同期比173.2%で2年ぶりに前年を上回っています。5月に特別清算の開始決定を受けた株式会社東京商事が1004億8300万円と1000億円を超える規模の倒産になりました。この倒産が平均を押し上げています。

2021年1月から7月の宿泊業の倒産のうちで新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響を原因とした倒産は27件と全体の55%前後と過半数を占めています。月別の全体からのコロナ倒産の割合は新型コロナウイルスの感染で広がった2020年4月に60.0%、5月には80.0%にのぼっています。その後は落ち着きを見せるも2021年5月から急上昇をして7月には83.3%と占めています。

1億円以上5億円未満が最多

負債額別の最多は1億円以上5億円未満の22件で全体の4割超を占めています。次いで1千万円から5千万円未満が12件、5千万円以上1億円未満と10億円以上が6件で続いています。負債5億円以上の割合が18.3%と前年同期の32.9%よりも14.6ポイント下げるも1億円未満の構成比は29.1%から36.7%と増加しています。コロナ渦の長期化で倒産は中堅から息切れが見えている小規模零細企業に広がりを見せています。

不況型倒産の割合が9割

原因別の最多は販売不振が39件で前年同期比23.5%減、宿泊業倒産のおよそ8割の79.5%を占めています。構成比は前年同期の64.5%よりも15ポイントほど上昇しています。このほかに累積赤字が4件、代表死亡2件、設備投資過大が2件と続いています。不況型倒産は43件と宿泊業の倒産の9割ほどを占めています。

5人未満が過半数

従業員別では5人未満が30件と前年同期比23.0%減と最多となっています。全体の6割と全体の61.2%を占めています。その他5人以上10人未満が7件と全体の14.2%、10人以上20人未満が5件となっています。300人以上の大型倒産は0件でした。

北海道と関東で増加

地域別では北海道が1件から3件、関東が13件から15件と増加、東北は10件から4件、北陸は4件から1件、東海が22件から8件、近畿が16件から6件、九州が7件から6件と減少、中国は5件、四国は1件と前年と変わりありませんでした。

参考資料・出典
東京商工リサーチ:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210810_03.html

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