【ワシントン=高見浩輔】米労働省が7日に公表した6月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から20万9000人増えた。24万人程度としていた市場予想を下回った。失業率は3.6%で5月の3.7%から低下した。利上げの打ち止め時期を探る米連邦準備理事会(FRB)は過熱が続く労働市場の動向を注視する。
就業者数の5月の伸びはわずかに下方修正され30万6000人となった。伸びは新型コロナウイルス禍前の2015〜19年平均にあたる19万人程度をやや上回る水準まで鈍化している。失業率は事前の予想通りだった。
平均時給は前年同月から4.4%上昇した。事前には5月の4.3%から4.2%に下がると予想されていた。前月比でも0.4%上昇して予想を上回った。
「客室清掃係、募集中」。米フロリダ州のビーチ近くにあるレジャーホテルは観光客が記念写真を撮る正面玄関の前に大きな求人広告を掲げた。米ホテル・ロッジング協会(AHLA)が5月に実施した調査で経営者の8割が人手不足だと答え、1月からさらに深刻になった。
宿泊業の就業者数はコロナ前より1割少ないままだ。米コンサルティング大手マッキンゼー・アンド・カンパニーは客室清掃とフロントの管理業務を兼務するといった省人化を進めるよう呼びかけている。
働き手が戻りつつある兆候はある。5月は「プライムエイジ」と呼ばれる働き盛りの25〜54歳の労働参加率が83.4%と07年以来の高水準になった。コロナ禍で退職を迫られた女性の職場復帰が目立ち、移民の流入も増えた。
それでも人手は足りない。5月の雇用動態調査(JOLTS)によると、非農業部門の求人件数は982万4000件。ピークの1200万件程度からは徐々に落ち着いたものの、コロナ禍前より4割多い水準だ。
米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者が想定する23年末の失業率は6月時点で4.1%。この予想は前回の3月見通しでは4.5%、さらに前の22年12月見通しでは4.6%だった。計5%の急ピッチな利上げを1年以上続けても、経済は想定を超える強さで成長してきた。
FRBは6月のFOMCで11会合ぶりに利上げを見送った。パウエル議長は続けてきた金融引き締めの効果が1年以上の時間差で実体経済に影響を及ぼすとみており、時間をかけて追加の利上げ幅を見極める考えだ。
金融先物市場は7月25〜26日に開かれる次回のFOMCで追加利上げを9割織り込んでいる。8月は会合が予定されていないため、当面は次々回の9月会合まで利上げが続くかが焦点となる。