22年度成長率2%に下げ 内閣府試算、コロナ前回復せず

内閣府は25日、2022年度の実質成長率が2.0%になるとの試算をまとめた。1月に閣議決定した見通し(3.2%)を大幅に下方修正した。中国・上海のロックダウン(都市封鎖)やウクライナ危機によるインフレなどで世界経済が減速し、設備投資や輸出が鈍る。実質国内総生産(GDP)が新型コロナウイルス禍前の水準まで回復するのは1年遅れて23年度となる。

経済財政諮問会議で報告した。22年度の物価上昇率は1.7ポイントの大幅な上方修正で2.6%と見込む。岸田文雄首相は「物価高騰はコロナ禍からの回復のリスクだ」と指摘した。「適切かつ効果的な対応策を講じる」と表明した。

今回の試算で、内需の柱の一つでGDPの2割程度を占める設備投資の伸びは2.2%と、1月時点の見通し(5.1%)から下振れした。中国のゼロコロナ政策やロシアのウクライナ侵攻などで世界のサプライチェーン(供給網)が混乱し、資源高などで先行きの不透明感が強まっている。

GDPの過半を占める個人消費の伸びも0.4ポイントの下方修正で3.6%とした。内需の成長寄与度は全体として3.0ポイントから2.3ポイントに下がる。

外需は失速が鮮明だ。0.2ポイントのプラス寄与を見込んでいたのが一転、0.3ポイントのマイナス寄与となる。5.5%と想定していた輸出の伸びは2.5%になる。

想定通りなら、22年度のGDPは548兆円となる。コロナ前のピークだった18年度の554兆円には届かない。23年度は1.1%の成長見通しで、ようやくこの水準に達する。

かねて政府の経済見通しは甘いとの指摘がある。今回の下方修正について、みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは「妥当だ」と話す。2.0%成長の試算は、日本経済研究センターが民間エコノミスト36人の見通しをまとめるESPフォーキャストの7月調査の予測平均と一致する。

この半年間の経済環境の変化は急激で、内閣府も厳しい見方を強めた。3月下旬から2カ月に及んだ中国・上海のロックダウンは、世界経済の懸念材料とみられていたゼロコロナ政策のリスクを顕在化させた。物流の混乱などで日本の鉱工業生産は5月に前月比で7.5%減った。

2月にはロシアがウクライナに侵攻し、エネルギーや食料の供給不安から世界の物価高に拍車がかかった。インフレを抑えようと利上げや金融緩和の縮小を急ぐ米欧は景気後退の影が忍び寄る。

先行きは不透明だ。内閣府は今回、日本を除く世界の成長率が2.4%になる前提で試算した。物価高が長引けば各国・地域の経済は一段の下振れが避けられない。日本も需要不足で賃上げが鈍い状況でエネルギー高や食品高が続くようだと景気が腰折れしかねない。

出典:日本経済新聞

関連記事