倒産手続きと倒産法(5)

破産の仕組みと手続き(2)

破産財団と換価

破産財団を構成する財産は、破産手続費用や配当の原資とするため、現金以外の財産は換価処分が必要です。全ての財産が換価可能ではなく、換価が困難か、換価できたとしてもほとんど値段がつかない財産もあります。そのような財産は破産財団から放棄し、破産者の自由な処分に委ねることになります。

  • 土地・建物の換価
    土地・建物は、抵当権が設定されている場合が多く、また、担保される債権の残額は土地・建物の売却見込み額を上回る場合が多いといえます。担保権を実行して競売にかけることにより、市場での売却も検討してみる必要があります。また、土地・建物に、滞納処分による差押えがされている場合がありますので、注意が必要です。
  • 売掛金の換価
    売掛金は、取引先に請求書を送付するなどして回収することになります。支払いを渋る取引先も出てくる可能性がありますので、早期の回収を図るべきです。
    売掛金が債権譲渡されている場合は、確定日付のある通知又は承諾がなければ、破産管財人に対抗することは出来ませんし、否認対象となる可能性もあるので、注意が必要です。
  • 商品在庫の換価
    商品在庫の売却先は、まず、従来の販売先を優先して考えるべきでしょうが、難しい場合は買取り業者にまとめて買い取ってもらうことも検討すべきでしょう。
    納品した取引先が所有権留保などを主張する場合がありますが、所有権留保を破産管財人に主張するためには、引き渡しなどの対抗要件が必要ですので、注意が必要です。

双方未履行双務契約について

双方未履行双務契約とは、破産手続開始時において、破産者との双務契約で、双方の債務の履行が完了していない契約をいいます。

無益な双方未履行双務契約については、契約の相手方の利益にも配慮しつつ、破産管財人に解除権を認める制度になっています。破産管財人は契約の解除か履行を選択できます。

解除を選択した場合、契約相手方の損害賠償請求権は破産債権となり、破産手続きにおける配当の可能性があるときのみになります。

履行を選択した場合、契約の相手方の債権は財団債権となり、破産債権に優先して弁済を受けることができます。

なお、双方未履行双務契約の解除権については、契約類型に応じてさまざまな特則がありますので、注意が必要です。

担保付財産からの債権回収方法について

担保となっている財産から債権を回収する方法は任意売却競売があります。

任意売却は、破産管財人が担保目的物の買手を見つけてきて、担保権者の了承のもとに担保権を抹消し、担保目的物を買手に売却する手続きです。担保権者が権利を行使する際には、通常は担保の目的となっている財産の競売が行われます。

任意売却は別除権者である担保権者の了承が必要となります。

  • 担保権消滅請求について
    担保権者の同意がなく任意売却できないと不合理な場合があります。
    そのため、担保となっている財産を任意に売却して担保権を消滅させることが破産債権者の利益にかない、担保権を有する者の利益を不当に害しない場合には、破産管財人は裁判所に対して担保権消滅の許可の申立てができます。

担保権者は

  1. 担保権を実行する
  2. 担保となっている財産を買い取る

とういう対抗手段が用意されています。担保権者が両者とも選択しなかった場合は、裁判所は担保権消滅請求に対して許可決定を出します。

図1:担保権消滅許可の申立て

破産における相殺権について

一般的に相殺は、双方の債権が同種の債権でない場合や、自働債権の弁済期限が来ていない場合には、相殺できません。

しかし、破産手続きの中では、債権者は破産者に対する債権の弁済期が到来していない場合や、債権の一方が金銭債権でない場合でも相殺が可能です。

  • 解除条件付の債権の取扱いについて
    解除条件付の債権とは、ある条件を満たすと債権は消滅するという条件が付けられている債権です。
    破産者に対する債権が解除条件付のものであっても、債権者は相殺ができます。ただし、解除条件付の債権を用いて相殺する場合には、破産財団のために担保を提供するか、寄託をする必要があります。
  • 停止条件付の債権の取扱いについて
    停止条件付の債権とは、条件を満たした場合に発生する債権です。
    破産者に対する債権が停止条件付のものである場合、債権者は相殺できません。しかし、停止条件が満たされた場合に備えて、債権者は相殺ができる金額について、寄託を請求することができます。停止条件が満たされた場合には、相殺がなされ、寄託された金銭が寄託を請求した債権者に支払われます。

破産における相殺の制限について

破産時においては、債権者による相殺権の行使が一定の制限を受けます。

  • 債務の負担時期による相殺の制限
    1. 破産手続開始後
      破産債権者は、破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担した時は、相殺をすることはできません。
    2. 破産手続開始の申立て後
      破産開始の申立て後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていた時は、相殺することができません。
    3. 支払停止後
      支払停止後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その当時、支払停止があったことを知っていたときは、原則、相殺することは出来ません。
    4. 支払不能後
      支払不能後に、債務を引き受けさせたりする内容の契約を締結し、その契約によって破産者なる者に対して債務を負担した場合であって、その当時、支払不能であったことを知っていたときは、相殺することはできません。

上記2~4については、例外的に相殺できる場合がありますので、注意してください。その他、破産債権の取得時期による相殺の制限や、破産管財人による相殺の制限などもありますので、注意してください。

破産における否認権について

破産手続きを行う前の段階で、破産者が自らの財産を減少させるような行為をしたり(詐害行為)、破産者が一部の債権者のみに弁済を行ったりすると(偏波行為)、破産管財人はこれらの行為の効力を否定して、流出した財産を破産者の財産の中に戻させることができます。このような破産管財人の権利のことを否認権といいます。

  • 詐害行為否認
    破産者が破産債権者を害することを知ってした行為や、支払停止または破産手続開始の申立て(支払停止など)の後にした破産債権者を害する行為は、原則として否認することができます。
  • 偏頗行為否認
    支払不能後または破産手続開始の申立て後にした行為は原則として否認することができます。
  • 否認権の行使方法
    否認権は、破産管財人が以下の破産上の手続きをする必要があります。
    1. 訴えの提起
    2. 訴訟における抗弁としての主張
    3. 否認の請求

否認権は、破産手続開始の日から2年経過すると行使できなくなります。

破産債権について

破産債権は、破産者に対して破産開始手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権のうち、財団債権に該当しないものをいいます。

財団債権とは、破産債権とは別に随時弁済を受けることのできる債権です。

財産上の請求権でなければ破産債権にはなりません。

破産債権には順位が付けられます。優先順位の高い順から、次の通りで、優先順位の高い債権から弁済を受けることになります。

  1. 優先的破産債権
    国税、地方税、労働債権などです。
  2.  一般破産債権
    1、2、3に該当しない債権です。
  3. 劣後的破産債権
    破産手続きが開始した後に発生した利息債権などです。
  4. 約定劣後破産債権
    劣後ローンなどです。

破産債権の届出

債権者は裁判所が指定した債権届出期間内に債権を裁判所に届け出なければなりません。届け出ないと配当は受けられません。

破産債権調査と破産債権の確定

管財人は財産の調査を行います。債権者は、他の債権者の債権の届出内容について異議を述べることができます。

債権調査により管財人の否認や他の債権者からの異議がなく破産債権者表が確定すれば、破産債権者表の記載は破産債権者全員に対して訴訟における確定判決と同じ効果を持ちます。

債権者集会と配当

債権者集会には①財産状況報告集会、②任務終了計算報告集会、③破産手続廃止に関する意見聴取集会などがあります。

破産財団に属する財産の換価と債権調査が終了し、配当できるお金が残った場合は配当手続きに入ります。配当がない場合は裁判所が破産手続廃止決定をします。配当には、それがなされる時期により中間配当最後配当追加配当がありますが、多くの場合、最後配当のみです。配当総額が100万円以下の場合は、簡易な手続きにより行うことができる簡易配当が実施されます。

配当が終了し、破産管財人は、任務終了の計算報告書を裁判所に提出します。任務終了計算報告集会の終結後、破産終結決定がなされ、裁判所が決定広告を行うことで、破産手続きは終了します。

以上

参お債権照文献:「会社の倒産 しくみと続き」(森公任・森元みのり監修)三修社