倒産手続きと倒産法(2)民事再生について

民事再生とは

民事再生は、原則として、債務者である会社の経営陣が業務執行や財産管理を続けながら、会社の再建を図る手続きです。
株式会社のみが利用できる会社更生と異なり、民事再生は法人だけでなく、個人も利用できます。
再生手続きが開始すると、債務者は再生債務者、債権者は再生債権者となり、債権は再生債権とよばれるようになります。

民事再生の特徴

現経営陣がそのまま手続きに関わることができる

このような手続きをDIP(Debtor In Possession)型手続きといいます。
但し、民事再生法においても管財人を選任することができます。
また、裁判所は再生手続開始前において必要があると認めるときには、財産の処分など一定の行為をする場合に、裁判所の許可を得なければならないものとすることができます。
さらに裁判所は、必要があると認めるときは、監督委員を選任して、既存の経営陣をその監督の下に置くことを命じることができます。現在ほとんどのケースにおいて、監督委員が任命されます。

担保権を実行できる

再生債務者に対して担保権を持っている者は、民事再生とは関係なく担保権を実行できます。事業の遂行に必要な財産が担保権の目的であるときは、担保権者との合意により担保権の実行を避ける必要があります。(別除権協定)

民事再生申立要件

申立を行うことができるのは、債務者と債権者です。(申立権者)
債務者は、以下の2つの場合に民事再生の申立てができます。
①債務者に破産手続開始原因となる事実が生ずるおそれがあるとき
②債務者が事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき
①の破産手続開始原因とは、支払不能または債務超過です。
債権者は、上記の①の場合にしか民事再生を申し立てることができません。②ができない理由は、②は会社の内情に通じた会社自身にしか判断することができないからです。

民事再生手続きの流れ

民事再生手続き、債務者などから裁判所が申立てを受けて、裁判所が再生手続開始決定を下すことで始まります。
民事再生の申立てをする際には、申立手数料と予納金を裁判所に納める必要があります。
予納額は、再生債務者の状況を考慮して、各地方裁判所が独自に定めます。予納がないと裁判所は申立てを棄却します。
民事再生手続きの大まかな流れは以下の図の通りです。

図:民事再生手続き流れ概要

再生債務者に対する債権について

再生債務者に対する債権には、①再生債権、②共益債権、③一般優先債権、④開始後債権の4種類があります。
① 再生債権
再生債務者に対して民事再生手続開始前に生じた債権のことをいいます。
② 共益債権
債権者全体の利益になる債権のことをいいます。民事再生手続きによらずに債務者の財産から優先的に弁済を受けられます。
③ 一般優先債権
一般先取特権などの優先権のある債権のことをいいます。従業員の給与や退職金などです。
④ 開始後債権
再生手続開始後に生じた債権で、再生債権、共益債権、一般優先債権のいずれにも該当しないものをいいます。再生計画で定められた期間が満了するまでは、開始後債権に対しては弁済することができません。

民事再生における相殺ルールについて

① 再生手続開始当時に再生債権者が再生債務者に対して債務を負担していた場合:
債権届出期間の満了前に相殺可能な状態になったときは、再生債権者は、原則として債権届出期間内に限り相殺が認められます。
② 再生手続開始後に再生債権者が再生債務者に対して債務を負担した場合:
再生債権者は原則として相殺することはできません。
③ 債権届出期間が経過した後に再生債権の弁済期限が到来する場合:
再生債権者は相殺することはできません。

別除権について

再生手続開始の時に再生債務者の財産に対し担保権を有する者は、その財産について別除権を有し、再生手続きによらずに担保権を実行することができます。別除権を行使するためには、担保権について対抗要件を備えていることが必要です。抵当権であれば、登記をしていることが必要です。

取戻権について

再生債権者の財産のようにみえるが、実際の財産の所有者が第三者であったような場合、第三者はその財産の取り戻を請求できます。これを取戻権といいます。取戻権の対象は動産だけでなく債権も含まれます。取戻権行使には、登記などの対抗要件が必要です。

再生債権について

再生債権の調査において、再生債務者が認め、調査期間内に届出再生債権者の異議がなかったときは、再生債権の内容や議決権の額は確定します。
確定した再生債権者表の記載は、再生債権者全員に対して確定判決と同一の効果を有します。

再生計画について

再生計画の内容

再生計画には、再生債権者の権利の変更や、共益債権、一般優先債権の弁済に関する条項などを定めなければなりません。
再生計画による権利の変更の内容は、原則として再生債権者の間で平等である必要があります。但し、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合は、再生債権者の間で差を設けることができます。

再生計画の提出

再生債務者は債権届出期間の満了後、裁判所の定める期間内に再生計画を裁判所に提出する必要があります。

再生計画の付議

再生計画案の提出がなされると、裁判所は、再生計画を決議に付する決定をします。

再生計画案の決議

債権者集会で再生計画案の決議が必要になります。
① 出席し、又は書面投票した議決権者の過半数の同意(頭数要件)
② 議決権者の議決権総額の2分の1以上を有する者の同意(議決権数要件)
が必要です。

再生計画の認可

再生計画案が債権者集会で可決された場合には、裁判所は再生計画認可の決定をします。再生計画は認可の決定により効力が生じます。再生計画認可の決定が確定したときは、再生計画によって認められた権利を除いて、再生債務者は、原則としてすべての再生債権についての責任を免れます。

図:再生計画案の流れ

再生計画案の効力

認可後の手続き

裁判所は次の不認可事由がない限り、認可決定します。
① 再生手続きまたは再生計画が法律の規定に違反し、且、その不備を補正することができない場合
② 再生計画が遂行される見込みがないとき
③ 再生計画の決議が不正の方法により成立したとき
④ 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき

監督委員は、再生計画認可決定後、3年間は再生計画を監督することによって、再生債務者の適正な計画遂行を担保します。

再生手続が廃止される場合

決議付するに足りる再生計画案の作成見込みがなくなったとき、期間内に再生計画案の提出がない場合、再生計画案が否決された場合などに、裁判所は再生手続廃止の決定をします。
民事再生手続きが廃止された場合には、裁判所は,破産手続開始決定をすることができます。

以上

参照文献:「会社の倒産 しくみと続き」(森公任・森元みのり監修)三修社