製造業などの業績下方修正相次ぐ 原材料高や景気減速が逆風に

製造業を中心に、令和5年3月期の通期業績予想を下方修正する動きが相次いでいる。世界的な景気後退や、以前から続く原材料費の高騰が重荷となっているほか、昨年末から外国為替市場で円安是正の動きが進み、為替差益の縮小懸念も強まっている。先行きの不透明感は依然として強く、来期以降についても厳しい見通しを示す経営トップが少なくない。 「大きな責任を感じている。不採算事業の撤退など新陳代謝を加速していく」 1日に住友化学が行った決算発表会見。岩田圭一社長は業績予想の下方修正を謝罪した。 同社は4年4~12月期決算発表に併せて、通期の連結最終損益予想をゼロと、実に1050億円も引き下げた。最終損益がゼロ以下になるのは平成25年3月期以来だ。化学各社はここ数年、好業績を維持してきたが、主力の石油化学事業などで中国経済の低迷や原材料の高騰といった悪材料が一気に押し寄せている。 電子部品各社の業績にも急ブレーキがかかりつつある。TDKは令和4年4~12月期の最終利益が過去最高を更新したものの、通期予想は1320億円と150億円引き下げた。スマートフォンやパソコンといったIT向け部品の需要が想定以上に落ち込み、「最終製品需要の低下圧力が強まっている」(山西哲司専務)という。 自動車業界は半導体不足やエネルギーを含む原材料費の高騰に苦しんでいる。3日に通期予想を下方修正したトヨタ自動車グループの部品メーカー、アイシンの伊藤慎太郎副社長は「輸送費やエネルギー費がかなり上がっている。事業環境は本当に厳しいが、体質強化に向けた活動を加速させる」と話す。 世界経済の今後については、ゼロコロナ政策を停止した中国で「経済活動が再度盛んになってきている」(資生堂の魚谷雅彦会長)ほか、暖冬でエネルギー高騰に悩む欧州の景気悪化が予想を下回るとの見方が出ている。半導体不足の解消で、自動車生産が緩やかながら回復しそうなのも明るい材料だ。 もっとも、景気後退懸念は依然として強く、原材料価格やウクライナ危機をはじめとする地政学リスクの行方も見通せない。製造業にとっては、昨年末から急速に進んだ円高も気がかりな材料だ。製造業以外も含め「米国や中国の景気、為替の動向などすべてが不透明だ」(豊田通商の岩本秀之取締役)と警戒する声は多い。

出典:Yahoo!JAPAN

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