【サンパウロ=宮本英威】南米チリ外務省は22日、環太平洋経済連携協定(TPP)を批准したと発表した。批准は10カ国目。チリ議会は10月、TPP締結を承認していたが、左派のボリッチ大統領はTPPに慎重な姿勢を示してきたため、署名に時間をかけていた。
TPPには日本を含む11カ国が参加している。チリ外務省は22日の声明で「国内の法的手続きを終え、2023年2月に効力を発揮する」と言及した。この時点からチリでもTPPで決めた関税やルールが適用になる。
チリ政府は、企業が政府を相手取って国際機関に仲裁を申し立てられるISDS(投資家と国家の紛争解決)条項を疑問視している。外務省の声明では、この条項について関係国との話し合いを続けたいとの意向を示した。
ボリッチ氏は貧富の格差の是正を重視しており、21年11~12月の大統領選で自由貿易協定(FTA)の新協定には慎重な立場を示してきた。チリのメディアによると、ボリッチ氏が下院議員だった際にはTPPの承認に反対票を投じた。
3月にボリッチ政権が発足する前のチリは自由貿易に積極的な国として知られていた。中南米諸国のなかで屈指のFTA網を持つ。TPPの前身となったFTAに参加していた4カ国の1つでもある。
出典:日本経済新聞