負債1千万円未満の倒産、年上半期は2年連続で減少 建設業、製造業など、資源高・資材コスト上昇の影響も

 2022年上半期(1-6月)の負債1,000万円未満の企業倒産は、220件(前年同期比6.7%減)で、年上半期では2年連続で前年同期を下回った。一方、「新型コロナ」関連倒産は57件(前年同期46件)で、負債1,000万円未満の倒産に占める割合25.9%(同19.4%)に上昇した。

産業別の最多は、「サービス業他」の94件(前年同期比13.7%減、構成比42.7%)。次いで、「建設業」49件(前年同期比63.3%増)、「小売業」27件(同20.5%減)の順。
原因別は、最多が「販売不振」の154件(前年同期比12.5%減、構成比70.0%)。『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は166件(同12.6%減、同75.4%)だった。
資本金別は、1,000万円未満が209件(前年同期比5.8%減)で、全体の95.0%を占めた。
形態別は、「破産」219件、「特別清算」1件で、すべて清算型の法的倒産だった。業績低迷から抜け出せず、経営再建ではなく事業継続の断念を選択する小・零細規模の事業者が多いことを浮き彫りにしている。
コロナ禍の資金繰り支援は、事業規模に関わらず企業倒産を大きく抑制した。だが、支援効果の希薄化に伴い、企業倒産は一進一退が続き、負債1,000万円未満は2022年1月・2月・6月が前年同月を下回り、3月・4月・5月は前年同月を上回った。
円安や資源高、ウクライナ情勢などの懸念材料も山積している。業績回復が遅れるなかで過剰債務の解消が難しく、コロナ関連の借入金の返済原資を確保できない企業も少なくはない。こうした企業は新たな資金調達が難しいだけに、事業再構築や経営再建、廃業などを含めた個別支援の重要性が増している。

  • ※本調査は、2022年上半期(1-6月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、通常の企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

2年連続で前年同期を下回る

 2022年上半期(1-6月)の負債1,000万円未満の倒産は220件(前年同期比6.7%減)で、上半期では2年連続で前年同期を下回った。2008年以降の15年間では、2016年同期(219件)に次ぐ低い水準だった。
「新型コロナ」関連倒産は57件(前年同期46件)で、負債1,000万円未満の倒産の4社に1社(構成比25.9%)がコロナ関連倒産だった。
負債1,000万円未満の倒産のほとんどは小・零細企業で、経営体力が乏しく資産背景もぜい弱な企業が多い。長引くコロナ禍での業績回復の遅れに加え、円安など懸念材料が山積するなか、新たな資金調達も難しくなっており、今後は息切れ倒産が増える可能性が高まっている。

1000万未満

【産業別】建設業、製造業、不動産業の3産業で増加

 産業別では、10産業のうち、建設業と製造業、不動産業の3産業が増加した。一方、減少は農・林・漁・鉱業、卸売業、小売業、運輸業、情報通信業、サービス業他の6産業、同数は金融・保険業の1産業だった。
最多は、サービス業他の94件(前年同期比13.7%減、前年同期109件)で、上半期としては2年連続で前年同期を下回った。構成比は42.7%で、前年同期の46.1%から3.4ポイント低下。
このほか、卸売業12件(前年同期比42.8%減)、運輸業4件(同55.5%減)、情報通信業11件(同8.3%減)は2年連続、小売業27件(同20.5%減)は2年ぶりに、それぞれ前年同期を下回った。
一方、建設業49件(同63.3%増)、製造業13件(同62.5%増)は、それぞれ3年ぶりに前年同期を上回った。この2産業の件数は前年同期の1.6倍増と、他の産業に比べ増加率も際立った。
このほか、不動産業7件(同16.6%増)は、2年連続で前年同期を上回った。
業種別では、建築工事業(1→11件)、塗装工事業(3→8件)、受託開発ソフトウェア業(6→7件)、バー,キャバレー,ナイトクラブ(3→5件)などが増加した。

1000万未満

【形態別】15年間で初めて消滅型の倒産が100.0%

 形態別では、「破産」が219件(前年同期比4.3%減、前年同期229件)で、上半期としては2年連続で前年同期を下回った。負債1,000万円未満の倒産の99.5%を占め、前年同期の97.0%より2.5ポイント上昇した。また、「特別清算」は、前年同期と同件数の1件だった。
消滅型の倒産の構成比は100.0%で、上半期としては2008年同期以降の15年間では初めて。
「民事再生法」は5年ぶりにゼロ。「会社更生法」は2008年以降の15年間では、1件も発生していない。
負債1,000万円未満の倒産は、ほとんどが小・零細企業。長引く業績低迷から抜け出せず、経営再建よりも事業継続を断念するケースが多い。

【原因別】販売不振が7割

 原因別は、最多が「販売不振」の154件(前年同期比12.5%減)で、上半期としては2年連続で前年同期を下回った。負債1,000万円未満の倒産の70.0%を占めるが、前年同期の74.5%より4.5ポイント低下した。「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が12件(同14.2%減)で、3年ぶりに減少した。『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)が166件(前年同期比12.6%減、前年同期190件)で、2年連続で前年同期を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は75.4%で、前年同期(80.5%)より5.1ポイント低下した。
このほか、「事業上の失敗」が17件(前年同期5件)、「運転資金の欠乏」が7件(同5件)で、それぞれ2年ぶりに前年同期を上回った。一方、「他社倒産の余波」が14件(同16件)で、2年連続で前年同期を下回った。

【資本金別】1千万円未満が9割超

 資本金別件数は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が209件(前年同期比5.8%減、前年同期222件)で、上半期としては2年連続で前年同期を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は95.0%で、前年同期の94.0%より1.0ポイント上昇し、上半期としては2008年同期以降の15年間で最高となった。
内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が83件(同6.7%減、同89件)、「個人企業他」が69件(同4.1%減、同72件)、「1百万円未満」が40件(同5.2%増、同38件)、「5百万円以上1千万円未満」が17件(同26.0%減、同23件)だった。
このほか、「1千万円以上5千万円未満」が11件(同21.4%減、同14件)で、2年連続で前年同期を下回った。また、「5千万円以上1億円未満」は4年連続、「1億円以上」は3年連続で、それぞれ発生しなかった。

出典:東京商工リサーチ

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