財務省が11日発表した8月の国際収支統計(速報)によると、貿易や投資などの海外との取引状況を表す経常収支は589億円の黒字だった。黒字額は前年同月から96.1%減り、8月としては比較可能な1985年以降で最小となった。単月で黒字になるのは2カ月連続となる。円安や資源高でエネルギー関連の輸入額が膨らんだ。
経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。
貿易収支の赤字が過去最大の2兆4906億円となり、全体を押し下げた。輸入額が10兆5502億円と52.9%増えた。単月で10兆円を超えるのは初めてだ。原油と石炭、液化天然ガス(LNG)の値上がりが響いた。8月の原油の輸入価格は1バレルあたり112ドル41セントと前年同月比52.3%上がった。円建ては1キロリットルあたり9万5610円と87.5%の大幅な上昇だった。輸入物価の上昇に円安が拍車をかけている。
輸出額は23.7%増の8兆596億円だった。自動車や鉱物性燃料、半導体等製造装置が増えた。輸出は世界経済の減速で伸び悩み、輸入の増加ペースと差がついた。
第1次所得収支の黒字は3兆3271億円と前年同月比46.8%増え、単月として最大だった。海外子会社の配当が増えた。円安により円換算の金額が上振れした面もある。
広告料の支払いなどが増えたサービス収支は6159億円の赤字だった。サービス収支に含まれる旅行収支は72億円の赤字となった。
訪日外国人の消費額から日本人が海外で使った金額を引いたもので、赤字は2014年9月以来となる。8月は出国する日本人が38万6400人だったのに対し、訪日外国人旅行者は16万9800人にとどまった。
出典:日本経済新聞