4月19日の外国為替市場は一時、2002年5月以来の1ドル=127円をつけた。19年11カ月ぶりの円安水準で、影響が広がっている。東京商工リサーチ調べによる上場主要メーカーの2022年3月期の期初想定為替レートは、最安値が1ドル=110円(平均1ドル=105.5円)で、期初に想定できない勢いで円安が進行している。
東京商工リサーチが4月1日~11日に実施したアンケート調査では、円安が自社の経営に「マイナス」と回答した企業は約4割(39.6%)に達した。1ドル=113円台で推移していた2021年12月発表の調査では「不利(マイナス)」と回答した企業は29.2%で、急激な円安進行に伴い4カ月で10ポイント以上悪化した。
業種別では、「繊維・衣服等卸売業」(77.5%)、「食品製造業」(71.0%)、「家具・装備品製造業」(70.8%)の3業種で「マイナス」と回答した企業が7割を超えた。原材料などの仕入を輸入に依存する業種を中心に、原油高に加えて円安がジリジリと経営への痛手になりつつある。
日米の金利差から円売りドル買いが進み、円安解消の見通しは立っていない。コロナ禍で業績回復が遅れた企業が多いだけに、円安がコスト高を招く形で追い打ちをかけている。
※本調査は、2022年4月1日~11日にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答5,398社を集計、分析した。 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
前回調査は、2021年12月22日発表。
想定為替レートは2021年7月21日発表の「東証1部、2部上場 主要メーカー123社 2022年3月期決算「想定為替レート」調査」を参照。
Q1.円安は貴社の経営にとってプラスですか、マイナスですか?(択一回答)
円安が経営に「マイナス」、中小企業で4割超
円安が経営に及ぼす影響について、「マイナス」と回答した企業は39.6%(5,398社中、2,141社)だった。一方、「プラス」は3.9%(214社)で、「影響はない」は29.5%(1,593社)。
前回調査(2021年12月)で円安が経営に「不利(マイナス)」と回答した企業は29.2%だった。円安が進むなかで円安が「マイナス」と回答した企業は前回調査から10ポイント以上増加した。
規模別では、「マイナス」は、大企業が34.8%(731社中、255社)に対し、中小企業は40.4%(4,667社中、1,886社)で、中小企業が5.6ポイント上回った。一方、「プラス」は、大企業が5.6%(41社)に対し、中小企業は3.7%(173社)だった。
業種別 アパレルや食品関連でマイナス影響目立つ
Q1で「プラス」、「マイナス」と回答した企業をそれぞれ業種別(業種中分類、回答母数20以上)で分析した。
「プラス」と回答した業種では、最も高かったのは「宿泊業」の16.6%(24社中、4社)。
次いで、「業務用機械器具製造業」15.0%(53社中、8社)、「輸送機械器具製造業」11.5%(78社中、9社)、「電気機械器具製造業」11.2%(124社中、14社)の順。
円の価値が相対的に下がる円安が、海外からのインバウンド客に有利に働く宿泊関連、輸出関連の製造業などで「プラス」と回答する企業が多かった。
一方、「マイナス」と回答した業種では、トップは「繊維・衣服等卸売業」の77.5%(58社中、45社)だった。次いで、「食料品製造業」71.0%(169社中、120社)、「家具・装備品製造業」70.8%(24社中、17社)の順。これら3業種は、「マイナス」と回答した企業が7割を超えた。
原材料や商品を輸入に頼る業種を中心に、円安がコスト高を招き、収益負担になっている。
Q2. 貴社にとって望ましい円相場は1ドルいくらですか?(択一回答)
企業の望ましい円相場、最頻値は1ドル=110円
望ましい円相場について、2,511社から回答を得た。
最多レンジは、「110円以上115円未満」の42.5%(2,511社中、1,069社)だった。最頻値は1ドル=110円で、一時、1ドル=127円台に達する円安水準は、希望レートより1ドル=15円以上も円安が進んでいる。
円安が経営に「マイナス」と回答した企業の望ましい円相場は、最多レンジが「110円以上115円未満」の42.9%(1,388社中、596社)だった。これは全体と同水準だった。また、最頻値は1ドル=110円で、これも同水準だった。「1ドル=125円以上」の回答は、0.9%(13社)にとどまり、円安が「マイナス」に働く企業には現在の円安はすでに重大な経営リスクになりつつある。
出典:東京商工リサーチ